11 / 16

第11話

  (From ~ 柊二)    しばらく会社に寝泊りをしていたので、   いい加減に帰れと静流に怒られ、   定時に会社を追い出された。   神宮寺氏と両親が婚約祝にと買ってくれた   **の億ションではなく、   短い間だったが倫太朗と共に暮らしたマンションへ   帰り部屋を開ける。   倫の痕跡を完全に消してしまうのが嫌で、   このマンションは主不在のまま、いつの日か   倫が帰ってくるその日までそのままとっておく事に   した。   戻って来ないと分かってはいるが、   帰っているかもしれないとの無駄な期待で   部屋を確認することが日課になっている。 「いるわけないか……」   独り言を呟き、小さく溜息をつきながら   殺風景な部屋の畳へ横になる。   そろそろNYは朝か……   独りでも起きられるようにはなったか?   ちゃんと飯は食ってるのだろうか?   ロクに料理も出来ないのに……   また、痩せているんじゃないだろうか?   あいつの事に関してだけは心配が尽きない……   四六時中、心配でたまらない。   香さんと結婚しても、同居するつもりはない。   もちろん”子作り”なんて、もってのほかだ。   子供が欲しいなら”子種”はくれてやるし、   その子の認知もする。   が、愛のないセッ*スはしない。   結婚してもオレはこの部屋へ帰る。   彼女には悪いが、そう決めている。   最近まともに寝ていなかった……   オレはゆっくり目を瞑った。   どのくらい寝ていたのか……夢で倫太朗に    『風邪を引く』と笑いながら怒られて目が覚めた。    『もう1回、お前にプロポーズする』と、   言ったオレの言葉を、   どう受け止めたんだろうか?    『愛してる』と、   言った言葉をどう受け取ったのか。   あいつから貰った花束を見ると、   すっかり元気がなくなっている。   まるで今のオレみたい……。   女々しいと言われようと、   諦めが悪いといわれようと構わない。   オレは『白』の意味は倫太朗からの告白だと   信じている。    『自分の色に染めろ』と、言う意味で   白を選んだと静流は言ったが、   オレは倫太朗と2人で『白』を染めていく。 「我ながらクサいか……」   オレは笑って、一番好きな倫太朗の笑顔を   思い浮かべながら花を買いに商店街へと   向かった。

ともだちにシェアしよう!