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第11話
(From ~ 柊二)
しばらく会社に寝泊りをしていたので、
いい加減に帰れと静流に怒られ、
定時に会社を追い出された。
神宮寺氏と両親が婚約祝にと買ってくれた
**の億ションではなく、
短い間だったが倫太朗と共に暮らしたマンションへ
帰り部屋を開ける。
倫の痕跡を完全に消してしまうのが嫌で、
このマンションは主不在のまま、いつの日か
倫が帰ってくるその日までそのままとっておく事に
した。
戻って来ないと分かってはいるが、
帰っているかもしれないとの無駄な期待で
部屋を確認することが日課になっている。
「いるわけないか……」
独り言を呟き、小さく溜息をつきながら
殺風景な部屋の畳へ横になる。
そろそろNYは朝か……
独りでも起きられるようにはなったか?
ちゃんと飯は食ってるのだろうか?
ロクに料理も出来ないのに……
また、痩せているんじゃないだろうか?
あいつの事に関してだけは心配が尽きない……
四六時中、心配でたまらない。
香さんと結婚しても、同居するつもりはない。
もちろん”子作り”なんて、もってのほかだ。
子供が欲しいなら”子種”はくれてやるし、
その子の認知もする。
が、愛のないセッ*スはしない。
結婚してもオレはこの部屋へ帰る。
彼女には悪いが、そう決めている。
最近まともに寝ていなかった……
オレはゆっくり目を瞑った。
どのくらい寝ていたのか……夢で倫太朗に
『風邪を引く』と笑いながら怒られて目が覚めた。
『もう1回、お前にプロポーズする』と、
言ったオレの言葉を、
どう受け止めたんだろうか?
『愛してる』と、
言った言葉をどう受け取ったのか。
あいつから貰った花束を見ると、
すっかり元気がなくなっている。
まるで今のオレみたい……。
女々しいと言われようと、
諦めが悪いといわれようと構わない。
オレは『白』の意味は倫太朗からの告白だと
信じている。
『自分の色に染めろ』と、言う意味で
白を選んだと静流は言ったが、
オレは倫太朗と2人で『白』を染めていく。
「我ながらクサいか……」
オレは笑って、一番好きな倫太朗の笑顔を
思い浮かべながら花を買いに商店街へと
向かった。
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