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第14話
(From ~ 柊二)
執務室に書類を持ってきた静流に、
「来月キミの結婚式が済んだら1週間ばかり休むから」
と告げる。
「何かあるの?」
「高校時代の友人の結婚式が札幌である。
招待されたから行ってくる」
タバコに火をつけながら静流を見て笑った。
「気分転換にもなるしな」
「地元の人なの?」
「まぁな」
「ふ~ん」
少し、ゆっくりしたい……
今年は色々とありすぎた…
「1人で行くんでしょ? 女遊びしても、
ハメを外さないようにね」
笑いながら静流が出て行った。
女遊びか……
倫太朗にひと目惚れをした日から、
体だけの付き合いをしていた女性達とは
縁を切っている。
久々に遊ぶか? いや、遊びはもう十分だ。
倫太朗だけでいい……。
1週間前、札幌で挙式をする友人の羽生と飲んだ。
奴と会うのは*年ぶりだった。
昔話に花を咲かせて、
陰鬱としていた気持ちも晴れてきた時に
『一緒に仕事をしないか』と誘われた。
オレの実家が『各務』と知っている上で、
声をかけてきた。
快諾は出来なかった。
各務と決別すれば、
倫太朗を迎えに行くことが出来る。
しかし、オレは神宮寺の娘と結婚する。
『神宮寺グループ』は大きすぎる……
『各務』もそれなりにデカいが、
如何せん規模が違いすぎる。
オレが無理矢理に香と縁を切ったとして、
『各務』は『神宮寺』に潰されるかもしれない。
縁を切るつもりでいても
”各務”を潰すわけにはいかない。
様々なしがらみがオレの身体に
幾重にも纏(まと)わりつく ――
オレは『現実』に押しつぶされそうだ……
動けないまま……何も出来ないまま、潰される。
”倫太朗、オレを救ってくれ……”
倫太朗の笑った顔を思い浮かべながら、
オレは呟いた。
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