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佐々木さんと《2》
「篠宮くん謝らなくていいよ」
「ふぇ…?」
「何ふぇ…?って」
思っていたことを当てられてしまってついふぬけた声が出てしまった。しかも佐々木さんめっちゃ笑ってる。……恥ずい。
「篠宮くんて顔に出やすいんだよ思っていることが。だからわかりやすいの」
そう言いながら俺の頭をぽんぽんと撫でてくれた。何でか知らないけど、佐々木さんも前の担当者さんも俺の頭をよく撫でる。嬉しいけど絶対子供扱してる以外のないのがわかってちょっと複雑。
でも、佐々木さんの場合はちょっとボディタッチが多い気がする。気がするってだけだし、無意識にやっちゃう人なのかなって思ってるから嫌じゃない。
初瑪にやられたら絶ッッ対嫌だ!!
「そうだ、篠宮くん。ちょっと渡したい物があってね……今出すね」
「渡したいもの?」
佐々木さんはいつもの黒い革製のバックからちいさなペットボトルを取り出した。
なんだろう?
「これなんだけどね。新作ドリンクって言って上司の人に渡されたんだけどね…甘いのって俺、得意じゃないんだよね。だから篠宮くんよかったら貰ってくれない?」
「え!いいんスか!」
「いいよ。むしろお願いします、かな?渡しておいてなんだけど、飲んだらすぐに俺に電話くれないかな?上司に感想聞かれたら困るからさ」
「全然いいっス!じゃあ、早速家帰ったら飲みますね!!」
渡されたペットボトルをリュックにしまうと、佐々木さんが「そうだった!」と言ってメモを読み出した。
「それ、疲れにもいいらしくって何かね…えっと、お風呂入ったあとにリラックスした空間で飲むのがいいんだって……って言われたよ。試してみたら?」
「はい!そうします!ありがとうございます!!」
「いえいえ、こちらこそ」
その後すぐに佐々木さんは会社に戻らないと行けないらしく、「進級祝いはまた今度ね!」と言って出ていってしまった。
もう時間もいい時間で辺りは少し暗くなっていた。初瑪がご飯作って待ってるんだっけ。早く帰らないと、なんか初瑪だけじゃ不安だし。
俺は足早に帰った。
そのペットボトルの中身を何も疑わずに………。
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