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驚くこと《1》side初瑪
「ねぇ、今まで初瑪に何回嫌いって言ったっけ?」
「知るか」
「んじゃあさ、それ全部取り消しで」
「は?」
りぃは店に入るなり、一目さんにこのコーナーにやって来た。りぃには軽く俺とこの店のことを話といたが、まだ何となく「もっと詳しく言え!」って顔に書いてあるように見えたが無視した。今はまだ話す必要がわからないからな。
コーナーに来てからりぃはずっと棚を眺めていた。そしてある本を見つけると、ぱああっと見るからにして嬉しそうにした。
自分の本があるからだな。ほんとに嬉しそうにキラキラ笑う。幼い子供が初めて大好きなものを見た時のように。
「ああああああ好き!!!!!」
唐突に大声をあげた、りぃ。 うるさい。それに何に好きと言っているかが謎だ。……周りの人がチラチラとこちらを見ているが、りぃは気づいていないようだ。はぁ……。
「いきなり大声をだすな、りぃ。……何がそんなに好きなんだ?」
「このポップ!!!!」
ポップ?……あぁ、本の紹介のヤツか。
「俺が作ったやつだな、それ」
「マジで?!え?!」
ものすごく驚かれた。
そんなに驚くことだろうか?
「なぜ嘘をつく必要があるんだ」
「ないないないないないっ!ないです!そんな必要ございません!」
ぶんぶんと手を大きく振って答えた。それでも、まだ顔から嬉しいって書いてあるように見える。お前は子供か、りぃ!
「りぃ、あまり大声をだすな。店内だぞ」
「わかってるよ!」
りぃは1度視線を本に戻すと、1人で何か納得したようにうんうんと頷いたと思ったら、今度はこっちにバッと振り向いて語りかけた。
「なぁ、初瑪」
「何だ」
「好き」
……………………?好き?は?…………好き???
普通に会話をするようにそう口にした。激しく動揺している自分がいる。今、何が起きたのかがわからないという感情と、嬉しさを含んだ感情が渦巻いていく。俺は、別にりぃに恋心を抱いているわけではない。ただ、純粋にりぃを手に入れこの手で穢したい。この気持ちは俺にとって恋なんてものじゃない。
……飽きたら終わり。
そう自分でもわかっている事だ。
なら、何故こんなにも俺は動揺しているのか。
「…………」
たぶん……それは。
「初瑪?どーした?俺なんか変なこと言った?」
りぃの笑った顔を見たからだ。
「……あっ、好きってゆーのは友達としてのだからな!ありがとうって感じを込めた好きって意味!」
そんなことを考えているとは知らないりぃは、慌ててそう答えた。りぃから顔を背け、気持ちを落ち着かせる。好きと言われたことに動揺しているわけではないのだから、好きの意味は別に構わない。いつまでも背を向けているわけにもいかず、不思議そうに見ているりぃに一言返す。
「……そんなことわかってるから安心しろ」
「あ、うん」
俺は人の笑顔に動揺するような奴だったのか?
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