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俺と電話の男《1》side初瑪
「ふぁ~見た見た〜!」
「そうだな。まだ居れるが」
「うん!俺も!」
あれからりぃと俺はは2時間半近く本屋さんにいてた。そのせいでもうお昼も1時間ほど過ぎてしまっていたが。
りぃに「お昼は何がいい?」と聞いたら「ハンバーガーが食べたい!」と言ったのでハンバーガー屋にいた。
中に入るといくらピークを過ぎたといえども混んでいたが、何とか席を見つけることが出来た。
「りぃ、あそこでいいか?」
俺が空いている席を指さして言うと、りぃがこくんと頷いた。急ぎ足でその席を取られないうちに席に座る。俺はりぃの向かいに座る。隣に座って驚かせてやっても良かったのだが、向かいの方が顔が見えるのでからかいがいがある。
「初瑪何たべる?買ってきてやるよ」
「一緒に行けばいいだろう」
「うん、まぁそうだな。じゃあ、いっか」
お互い頼むものが決まったので、貴重品以外を置いて人の列に並んだ。
「おおーやっぱ混んでるな」
「まぁな、それはそうだろう」
店の店員さんの仕事が早いのか、思っていたよりも早くたどり着くことができ、注文を済ませ、商品を受け取ることが出来た。
席に戻ると、りぃが「手洗ってくる」と言って立ち、それから終わって席に戻る途中だろうか……自分の席手前で誰かとぶつかった。
「ごめんなさい!」
りぃが慌てて謝った。
でも、その次に出た言葉は意外な言葉で。
「佐々木さん……?」
「あ、篠宮くんだ。偶然だねお昼かな?」
電話の声の男がいた。
「りぃ?」
席の目の前でぶつかったのだから俺にもバッチリ見えていて、俺はりぃに話しかけたその男を見た。別に整っていないというわけでもないような顔。だからといってモテるという顔ではないがな。日本人らしい黒髪で、普通のサラリーマンのようにも見える。
──りぃを見つめる、
その目の熱っぽさがなければ。
あきらかにこの目に気づいていないりぃを、軽く睨んでやる。
「あ、ごめんね。お友達と遊んでるところなのに」
その男が急に話を切り出す。
「いえ!大丈夫です!」
「ありがとう。……えっと、こちらはお友達?」
その男はあきらかに「お前誰?」とでも言いたそうな顔をして、俺の方を見ながらりぃに尋ねた。りぃに答えられる前に自分で話だし、何とかこの男と会話を繋げたい。
「……楠です。初めまして…ではないですよね?
昨日電話越しで1度お話したことがありますから」
「……あぁ、君が昨日の電話の子なんだね。だからどっかで聞いたことある声だと思ったよ」
俺の発する言葉に嫌味を含めて話していく。目の前のこの男の俺を見る目は冷めている。いや、嫌悪を感じる。俺に対しての憎悪と嫌悪。
初対面でかなり俺を嫌っている。
そのようになるのは当たり前だが。
「貴方は?」
「俺は佐々木。篠宮くんの小説の担当者なんだ」
「そうですか……」
俺はりぃをチラッと見た。
特に意味は無いが、何故だか不安でしょうがない。俺の気持ちもおかしいのだ。目の前にいるこの男にものすごく警戒している。
りぃは何故か俺に頷いた。
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