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始まる遊び《1》*

「……ッ」 言った側からこんな噛み付くようなキスをしてくる初瑪は、ほんとに優しくしてくれるのかと疑う。そのキスはだんだん弱くなっていって、ふっと口を離された。肩口に顔を埋め、首筋をつーっと舌がはう。そんな慣れない感覚に体を強ばらせると、頭を撫でられる。 舌は動いたまんまだけど……… 「……んっ……ッ」 その感覚に反応していると、いろんな疑問が浮かんでくる。 なんで、初瑪はこんなことをしたいんだろう。 なんで、遊び相手に俺を選んだのだろう。 なんで。 なんで俺は。 なんで俺は逃げないんだろう。 「ちょっと待ってろ」 初瑪が俺から体を離し、そう言って部屋から出ていく。今なら、どうにかこのネクタイを外せば逃げられるかもしれない。なのに、俺には出来ない。だって、何となく……だけど、この1週間が終わったら、初瑪と一緒にいられない気がしてならないから。 クラスでも人気のある初瑪。 顔が良くて、少し素っ気ないけど実は優しい所とかみんなきっとわかってるんだろう。 俺は別に陰キャじゃないけど、初瑪みたいに自然と人が集まってくるとかはあんまりない。 何だろ……ちょっとしたムードメーカー的な? まぁ、よくわからないけど初瑪とあんまいられなくなるんだろうなぁ……ってことだけ思う。今まで家で会えたからいろんな話が出来て、でも学校じゃじゃなかなか話せなくって。初瑪は人に囲まれてるし、俺は俺で碧とかとつるんでるし。クラスが落ち着いたら、変わるかもしれないけど。 「大人しくしてたか?」 そんな所で初瑪が戻ってきた。 「縛られてたら逃げたくても逃げれねぇし」 「そのために縛ったんだから、そうでなきゃ困るけどな」 そして手には、やはりこないだと同じものを持っていた。 「……何でさ、ローションとバスタオル常備してるわけ?」 媚薬に侵された俺を助けるって言ってた時にも持ってきてきた、それ。普通の男子高校生って常備してるもんなの? 「あれば何かと役に立つからな」 「例えば?」 そう聞くと初瑪はベッドで横になっている俺を隅の方に押しのけて、俺が元いた場所より少し下の位置にバスタオルを敷いて、俺をその上に戻した。俺もちょっと協力して動いてやったけど、扱い雑! 「バスタオルはこう使う」 「あ、はい。そうですか」 こう使うっていわれても、よくわかんねぇし……とりあえずそう答える。

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