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碧くんと俺と金髪くん《3》
「ほらほら、自己紹介〜」
「なら、カラオケに向かいながらにしませんか?早くしないとケーキ危ないんで」
「おおっ、そうだね!よし、李絃行くよっ!」
碧のテンションは、たまについていけない。
そして、そんな碧は思ってもみなかった行動にでる。俺たちの前を帰ろうとした初瑪が、通り過ぎようとしていて。それを見た碧は何かを思いついたような顔をした。
待って、碧。
なんで君は初瑪を引き止めているの?
「あっ、楠くん!一緒にカラオケ行こっ!」
振り向いた初瑪の顔には「は?」と書いてあるようだった。そりゃ、当たり前だ。
俺だって「は?」と思ってるよ!!
「ねぇ、ダメ?」
でたぁぁぁ!!!!!
碧がの必殺「ダメ?」攻撃!!
肯定の返事以外出来なくなってしまうと呼ばれる、あの上目使いからの、わんこの耳が見えるような錯覚攻撃!!!
果たしてそれは、あの初瑪くんにも効くのでしょうか!!!期待が高まりますね!!
「って、どこのナレーションやボケッ!!」
思わずその場でつっこんでしまった。
そんな俺のツッコミを無視して初瑪が聞く。
「……何故、俺を呼ぶ?お前なら誰でも一緒に行くと言うだろう?」
初瑪のいうことは正しい。現に碧は他のヤツらからも一緒に行こうと誘われてたしな。
それを断って今なんだし。
でも、碧の答えは俺の予想と……たぶん初瑪の予想の斜め上にぶっ飛んでいた。
だって。
「李絃が、ここ2週間なんか考えこんでるのって楠くんのことでしょ?李絃たまにチラチラ見てるし、楠くんだって李絃のこと見てるじゃん〜♪だから〜」
「んな?!」
もちろん声を発したのは俺。
いやいやいやいやなんでバレてんの?!
俺が初瑪のことでモヤモヤしてるって。
「李絃わかりやすいもん。あんなに楠くんのこと見てれば俺には一瞬だよ?」
「そんなに初瑪のこと見てた?」
「見てたよ〜」
「どのくらい?」
「恋する乙女くらい〜♪」
恋する乙女。
重症じゃんか……って!!
「俺は乙女でもねぇし恋もしてねぇ、ただ!」
「ただ?」
初瑪があの身の危険を感じる笑顔を浮かべて、面白そうに聞いてきた。
「……っ、何でもねぇよ!!」
……ただ、気になっちゃうだけだし。
決して恋とかじゃ、ない。
決して。
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