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気づいてないなら《3》(side李絃)
「その子の事を “ 好き ” か……ってことだよ」
────好き
何故かその言葉がすとんと心に落ちる。
碧に言われたその言葉。
俺が碧に話したことは全部初瑪のことで、それを聞いて碧が言ったのだから、その子とは初瑪のことで間違いない。碧には初瑪って言ってないけど。
好き……俺は初瑪のことが好きなのか?
確かに何だかんだ言って初瑪の事は嫌いじゃない。今、俺が碧に言ったことは何一つ嘘じゃない。好きってどういう意味の好きなんだろう。
…………わからない。
「好きってどういう意味?」
違う。
ほんとはわかってるんだ。
だって、ほんとにわかってないなら、この好きの意味はひとつしか思わないのが普通だから。
でも、俺は認めない。認めたくないんだ。
……だって、そんなの普通じゃない。
俺以外の人が同性に恋をしたり、その結果恋人になるのは別にかまわないし、ほんとに好きならむしろよかったねって応援してあげたい。
同性愛に偏見なんてない。
…………なのに。
いざ俺が男を好きになったとなるとおかしいんじゃないかって思ってしまう。今まで何人か付き合ってきて、恋人もいたけど、1度もちゃんと上手くいかなかった。好きじゃない子から告白されてOKしちゃう、俺も俺なんだけど向こうも向こうだった。
「李絃」
黙りきっていた俺に碧がいう。
けど、俺の質問には答えない。
「相手が誰であろうと好きになったら好きって認めるしかないんだよ。好きでいるのは自由なんだからね。例え相手に好きな人がいても、その相手に振られてしまっても、相手が同性でも……ね」
そんなのわかってる。
「好きってどういう意味?って李絃聞いたよね」
わかってる、わかってるから言わないでくれ。
まだ気づきたくない。
認めたくない。
「恋愛感情としての “ 好き ” って意味だよ」
まだ、このままでいたい。
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