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帰り道2《1》

「はああ〜、歌った歌ったぁ〜!」 カラオケからの帰り道、碧が嬉しそうにはしゃぐ。どうも、本日の主役、碧はお気に召したようだ。めっちゃ美味しそうに、ケーキも食べてたし。 「良かったっス。相澤センパイが喜んでくれて」 「うん!灯輝も李絃も、楠木くんも付き合ってくれてありがとね!すごい楽しかったぁ〜♪」 ほんとに嬉しそうな顔でいうから、つられて俺たちも笑ってしまう。ただ1名を除いて。 「楽しかったのなら、それでいい」 笑ってはいないけどそう言うから気持ちは一緒だろう。めったに笑わない初瑪だからな。 んで、あの後…俺は必死に『好きじゃない好きじゃない好きじゃない』と自分自身に言い聞かせておいた……だって、あの場の雰囲気でマジで好きになったら大変だからな! …………なーんて。 「じゃあ、李絃!俺と灯輝こっちだからバイバイだよ〜……って、あ!楠くんはどっち?」 「俺はりぃと同じ方向だ」 「そっかぁ〜♪じゃあ、李絃のことよろしくね!楠くん、李絃またね〜♪」 そう言って、灯輝の腕を掴んで…ぐんぐんと歩いて行ってしまった碧。えっ、待って。 もちろん俺と初瑪の間には沈黙が流れる。あの1週間が終わってから、こうやって二人っきりになったのは、はじめてだった。 なんなんだこの沈黙は!耐えられない!! いろんな意味で耐えられない!! ただただ足だけが動き、音を出す。 そんな沈黙を破ったのは初瑪だった。 「りぃ、次アイツに会うのは2週間後だよな」 「アイツって?」 「この間ハンバーガー屋であった、りぃの担当者のことだ」 「あぁ!佐々木さん?それなら、予定変更で明後日になったけど……」 「は?」 なんか緊急の打ち合わせが何とか言ってて、予定が明後日になったと佐々木さんに知らされたのは1週間前のことだった。それよりも何故打ち合わせを初瑪が気にするんだろ。 というかこの感じだと……気にしてるのは打ち合わせじゃなくて、佐々木さん?

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