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帰り道2《2》
「明後日の何時だ。その打ち合わせは」
「そんなこと初瑪が知ってどうすんの?」
「いいから言え」
「理由教えてくんなきゃ嫌だ」
「はぁ、説明はめんどくさいからしないが……一言、いうならお前を守るためだな」
俺を、守るため?
「とりあえずいいから言え」
「う、うん」
そう言われてすごく嬉しいと思ってしまった。
まだ、初瑪は俺に飽きてはないんだな、って。
「明後日の夜8時に、俺ん家である」
「随分と遅い時間だな」
「んー、なんか佐々木さんの仕事あがれるのがその日は7時みたいで、そっからだからな〜」
「打ち合わせは勤務時間にする事じゃないのか?」
「何回かこういうのあったけど?」
「……そうか。まぁ、いい。その佐々木って奴が来たら家の鍵は開けとけ」
「え、物騒じゃん」
「その佐々木って奴の方が物騒だ」
いや、まぁ、うん。
とりあえず初瑪が佐々木さんに警戒してることはわかった。たぶん、この間のジュースのことだよな。もう大丈夫だと思うけど。
「うん。わかった…開けとけばいいんだな」
「あぁ、そうしてくれ。それと、何かあったら俺を呼べ」
「何かって?」
「襲われそうになった時とかな」
「お、襲われ?!ないないない、俺男だし!佐々木さんだって男じゃん!ないないないないないッ」
佐々木さん、だって確か普通に彼女いるって言ってたし!ねぇ!
「ったく……着いたぞ、りぃ」
「え?」
話しているうちに、どうやら俺の家の前まで着いていたようだ。
うっわぁ、なんか不思議。
時間の経過が早いんですけど。
「ありがとな、初瑪。んじゃ、鍵は開けとくから。まだ何かあったら連絡してこいよ。おやすみ」
そう言って、歩き出すと初瑪に「りぃ」と呼び止められる。「何?」と言って、振り向けばギュッと抱きしめられた。
な、な、ななな何?!
初瑪、去り際に抱きしめるの好きだね?!
「今度の不法侵入は許せ」
「な、不法侵入ってなんだよっ?」
「何かあったら……勝手に明後日、りぃの家に入るからな。その事だ」
「わっ、わかったよ!そんなこと言うためにだけに、こんな所で抱きしめんなアホ!」
『好きじゃない好きじゃない好きじゃない』
バクバク鳴っている心臓に気づき、そう唱える。俺にとってはもはや魔法の呪文状態だ。
「りぃ、おやすみ」
そう耳元で囁くと俺から離れる初瑪。
あっ、ばっ、えっ、あ。
耳が熱い。耳だけじゃなくて顔まで熱い。
ずるい。今のはなんかずるい。
そんな俺を見て初瑪は嬉しそうに笑い「じゃあな」と言って、帰っていく。
このやろう!!!こんにゃろー!!
「まだ心臓にバクバクいってんじゃねぇか!」
あぁ、もう!
俺は初瑪なんて好きじゃない!!
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