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犯人は《1》

-5分後 「…っ……ぁ……」 「大丈夫、篠宮くん?」 「……大丈夫……っ…です!」 いや、なんにも大丈夫じゃない。 今すぐどうにかしなければヤバい。 ここから離れなきゃ……!! 嫌な予感は当たるもので、あのジュースにはあの時と同じように媚薬が混入されていた。 たぶん、入れたのは佐々木さん。上司がくれたっていうから、上司の人が佐々木さんに飲ませるために入れたって言うのも考えられるけど、たぶん違う。 媚薬飲ませるっていうのは……初瑪が言うにはその人を襲いたいという気持ちがあるからだろうし、なら、このジュースを渡した後、一緒にいるか何かすると思う。 今の佐々木さんのように。 それが本当かはわからないけど、ここに居ちゃいけない気がしてならない。早く佐々木さんから離れなきゃ。と、思っても既に俺の体はあの時と同じように出来上がっている状態。 アツい体のせいでまともに動けないし、思考が鈍っている。 うわああだから誰だよ媚薬作ったクソ野郎は! 「なんか体調悪そうだから俺もそっち行くね」 え、困る!無理無理無理!!!!! 今ちょっとでも動いたり、何かに触れたら絶対変な声出るから無理!やめて!危険! 「大丈夫……です、よ。体調なんて……っ、悪くない、んで!」 息が上がってなかなかスムーズに喋れない。 俺の脳内は、佐々木さん危険警報が鳴り響いている。 「だーめ。大人のいうことを聞いてなさいね」 そう言って、俺の隣に座る。その時、佐々木さんが俺の腰にほんの少し触れた。 「ひゃっ……ッ」 しまった……と思った時にはもう遅く、佐々木さんは見たことないような顔で嬉しそうに笑う。 「速効性ってここまで早く効くんだね」 この言葉で媚薬を入れた犯人は佐々木さんだと確定する。殴ったり蹴ったりするなどの、体力的な喧嘩は慣れている。人より何倍もの経験もある。 ……でも、そんなの今の俺には意味がない。 あくまで俺が喧嘩できるのは体が正常な時のみで。媚薬飲んだだけで、ただの弱い者になるんだ。 そうわかると、恐怖が込み上げてくる。

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