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聞こえない宣言《1》side初瑪
抱きしめられながら眠ってしまったりぃを寝室まで運び、ベッドに寝かせたところで、インターフォンがなった。
……警察か。
玄関のドアを開けてみると、思っていたとおりそこに居たのは警官で「夜遅くにすみません。さっきの件ですが」といってくる。リビングに入る前にとっさにポケットにしまった、アイツとりぃの会話が録音されてあるレコーダーを差し出す。
「ここに声が録音されているのでどうぞ」
「ありがとうございます!確信的な証拠になるのでとても助かります。こちらは後日お返しに来ますので!」
「いえ、処分してくださって結構です」
「いいんですか?」
「構いません」
そんなの残しておいても、俺のためにもりぃのためにもならない。
嫌な記憶は少しでも軽くしてやりたい。
「そうですか、わかりました。こちらは責任もって処分させていただきます。ご協力ありがとうございます」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
警官はお辞儀をすると、急いで外に駆けていった。そのまま寝室には戻らずに、リビングに行き、さっきまでの名残をすべて片付けた。
テーブルの上にあった食べかけのチーズケーキ。
「嬉しかったんだろうな……」
クラスでりぃが、クラスのヤツと一緒にチーズケーキを食べに行くと言っていた時の嬉しそうな顔が浮かぶ。まだ、半分ほどしか食べられていないチーズケーキ。悪いがそのままゴミ箱に捨てる。
りぃには嬉しいものかもしれないが、俺にとってはアイツが持ってきたもの全てが、怒りの対象になっているから。
そして、その隣にあったペットボトルを見て、そのままゴミ箱に捨てる。
ゴミ箱にはさっきのネクタイも入っていたので、ゴミ箱に捨てるものを全て入れたら、そのまま袋の口を閉じ、外に出す。早く消し去ってしまいたい。そう、思いながら。
ゴミ箱には勝手に台所をあさって、新しいゴミ袋をつけておいた。
片付けが終わり寝室に戻れば、りぃのすぅすぅと安定した寝息が聞こえてきた。りぃの隣に横になると、その安らかな顔が見えて安心する。
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