149 / 174

聞こえない宣言《1》side初瑪

抱きしめられながら眠ってしまったりぃを寝室まで運び、ベッドに寝かせたところで、インターフォンがなった。 ……警察か。 玄関のドアを開けてみると、思っていたとおりそこに居たのは警官で「夜遅くにすみません。さっきの件ですが」といってくる。リビングに入る前にとっさにポケットにしまった、アイツとりぃの会話が録音されてあるレコーダーを差し出す。 「ここに声が録音されているのでどうぞ」 「ありがとうございます!確信的な証拠になるのでとても助かります。こちらは後日お返しに来ますので!」 「いえ、処分してくださって結構です」 「いいんですか?」 「構いません」 そんなの残しておいても、俺のためにもりぃのためにもならない。 嫌な記憶は少しでも軽くしてやりたい。 「そうですか、わかりました。こちらは責任もって処分させていただきます。ご協力ありがとうございます」 「いえ、こちらこそありがとうございました」 警官はお辞儀をすると、急いで外に駆けていった。そのまま寝室には戻らずに、リビングに行き、さっきまでの名残をすべて片付けた。 テーブルの上にあった食べかけのチーズケーキ。 「嬉しかったんだろうな……」 クラスでりぃが、クラスのヤツと一緒にチーズケーキを食べに行くと言っていた時の嬉しそうな顔が浮かぶ。まだ、半分ほどしか食べられていないチーズケーキ。悪いがそのままゴミ箱に捨てる。 りぃには嬉しいものかもしれないが、俺にとってはアイツが持ってきたもの全てが、怒りの対象になっているから。 そして、その隣にあったペットボトルを見て、そのままゴミ箱に捨てる。 ゴミ箱にはさっきのネクタイも入っていたので、ゴミ箱に捨てるものを全て入れたら、そのまま袋の口を閉じ、外に出す。早く消し去ってしまいたい。そう、思いながら。 ゴミ箱には勝手に台所をあさって、新しいゴミ袋をつけておいた。 片付けが終わり寝室に戻れば、りぃのすぅすぅと安定した寝息が聞こえてきた。りぃの隣に横になると、その安らかな顔が見えて安心する。

ともだちにシェアしよう!