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このタイミングで《1》side初瑪
「わかったな、りぃ?」
目の前の「俺はもう暇だから何でもできる〜♪なにしよっかなぁ!」とでも先程まで思っていたであろうりぃを見る。
「なになになになに!!何をすればいいんだよ?!わかったな?だけじゃ伝わんねぇよ?!」
あえてわかんないように伝えて、お前が覚えているか確かめているんだ。わからないのは当たり前だろう。だが……まぁ、言わないでおこう。
「あぁ、説明が不足していたな」
俺が同じことをやられていたら、説明が不足していたと表すぐらいではないと言っているだろうが。まぁ、いい。
「りぃ、体調は?」
「え、何?万全だけど……」
「疲れてるか?」
「いや、疲れてはねぇけど」
「じゃあ、遊……「って待て待て!!!」
俺が話している途中で、りぃが大声で被せてくる。流石にりぃも、この後なにを言おうとするのかわかったのか。学習したな、りぃ。
俺があえてりぃのために“遊ぶ”という言葉を使ったのに、こいつは知らずに自らを貶めていく。
「ご奉仕する約束だろう、りぃ?」
いつもの俺を装って笑った。本心を言うならばご奉仕なんてもの入らない。ご奉仕しろとりぃに言ったのは俺だが。
…………悲しくなるのは、何故か。
今までの俺なら喜んでこの言葉を使う。
ご奉仕……相手を見下し、俺を優位にし、そのように扱うことが出来る言葉。全てを俺に屈し、拒否権など与えずに俺に捧げる。主従関係。
でも、りぃにこれは求めたくはない。
あくまでも対等で俺と同じくらい良い感情をお前に与えたい……そう思ってしまうから。
「忘れたのか?」
「忘れられねぇよ!忘れたりでもしたらなんか怖いからな!!」
「じゃあ、するか?」
「どうせ拒否権なんてねぇんだろ」
「嫌なことはしない」
「何でも?」
「大体は、な」
俺が理性を保てれば何だって聞いてやる。
「…………あんまりエロいことはするなよ」
「りぃのいうエロいこと基準はなんだ?」
「……前触ったり、な、中入れたり…するヤツ…」
「じゃあ、キスはいいんだな?」
普通ならわざわざ確認なんてしない。俺がしたくなったらする。それが俺の中の定義なはず。
「ったく、遊ぶって言い方の方がお前もいいと思ったのだが……」
「…………いい」
佐々木にキスされそうになった時の、あの言葉が忘れられない……悲痛な叫びがこだまする。
だから、今こうしていいとお前に言われていても躊躇う俺がいる。
俺はお前にとって怖いものなのか。
俺はお前にとって脅したやつとしか無いのか。
俺はお前にとって…………
「……っ、そうか」
一瞬声を詰まらせるものの、なんとか平然を装う。
「あんま激しいのはダメ。そういうのは好きな人にやれ!」
「わかった…」
りぃの目から顔を背け、ふぅ……と息を吐く。
俺が何もしなければ大丈夫。こんなにも俺はりぃに嫌われたくないのか……滑稽だ。
そんなことを思いながらりぃを見ていう。
「ご奉仕頑張れよ、りぃ」
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