「…………っ」 心で思ったことを口に出してしまった時には、既に言葉は初瑪の耳に届いていた。初瑪が驚いたような顔をして、グッと俺の顔に自分の顔を近づけてくるから思わず目を閉じる。 その反動で目に溜まっていた涙が、ポロっと零れた。 「……りぃ」 至近距離の甘ったるい声。 そんな声で呼ばないで……つらいんだよ……っ。 「何を、だ」 初瑪に言われてしばらく思考が回らなくて、少し間が空いてからその言葉に答える。 「…………キス…ｯ」 初瑪から目を逸らして言った。 たったこれだけのことで、自分の顔がものすごく真っ赤になってるのが分かってかなり恥ずかしい。当たり前じゃんか……キスしないのなんて。 「無理だ……ｯ！」 ほら、やっぱ男となんて………… 好きじゃないやつとなんて無理なんだよ。 わかってたのに口に出して、自分から傷つきにいく俺は相当馬鹿なんだ。それでも、俺は初瑪のことご好きだから、望んでしまうんだ。 「……ごめ……っ？！」 謝ろうとしたら、言葉が消えた。 「……んっ………ぅ……ぁふ……」 初瑪にキスをされているから。 嬉しいのに……嬉しいのに。 なんで……なんで優しくすんの……！ 無理ならやめろよ。 優しさでされても、初瑪に嫌な思いをさせているならしたくなかった。俺だけなんて、嫌だ。 なぁ、答えをくれよ……初瑪。