165 / 174
“こころ”があるから《2》
「何で…っ」
「俺の勝手だろう」
もう、俺には自分の気持ちも初瑪の考えも、何もかもわからない。
おさえ込んでいた涙は、じわじわと溢れてくる。
「もう終わりだ」
そう初瑪は言うと、部屋からでていく。
やだ……やだやだやだやだっ!!
終わりって何?何が終わるのさ!
その言い方じゃ、俺たちが一緒にいた事さえなかったようになりそうで。
今、初瑪を引き止めないと。
───後悔する。
「行くなよバカッ!!!!」
玄関で靴を履いていた初瑪に背後から思いっきり、言葉を投げつけた。
もう、涙なんて我慢出来なかった。
いつからこんなに涙脆くなったんだっけ。
ビクッと肩を揺らした初瑪が、振り返る。
「何故だ?」
何故って……
「わかんない……けど」
「けど?」
初瑪は履いていた靴を脱ぐと、廊下の真ん中に突っ立っていた俺の前まで来て、気づいたように涙を拭ってくれた。
けど、行ってほしくない。
こんなに苦しくて、辛くて、1日中一人の人のことばっかり考えることなんて今までなかった。
意地悪なのに、俺様なのに、自分主義だし、変態だし、すぐキスしてくるし、りぃって呼ぶし。
嫌なことばっか……だったのに。
絶対友達になれるタイプじゃないなって。
仲良くなれるタイプじゃないなって思ってたのに。
優しくって、実は気遣いできて、変なところで律儀で、カッコよくて、好きなことしてる時の顔がすっごく嬉しそうで。
あぁ、もうわかんないことばっか!
「全部初瑪のせいだバカァァ!!!!!!」
「泣きながらバカバカ言われても、わかんないんだが……何がいいたいんだ?」
初瑪が俺の頬に手を添えながら、目を細めて笑う。そんな聞きたくないような、辛そうな顔してるのに……何で笑ってるんだよ。
もう止められないじゃんか。
ともだちにシェアしよう!