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月が綺麗《2》side初瑪
「何で…っ」
「俺の勝手だろう」
そんな今にも泣きそうな声で、言わないでくれ。
抱きしめたくなる。
大丈夫だ、どこにも行かない。
……そう言ってしまいたくなる。
そんな気持ちを閉じ込めて一言、告る。
「もう終わりだ」
なかったことにすればいい。
自分がわからなくなる前に手放すのが最善策。
そう信じて俺は部屋からでていく。
荷物は後でどうにかして取りに来ればいい。
何なら捨ててくれたって構わない。
玄関で靴を履きながら、ふと思う。
りぃはこの言葉の奥にある意味に気づいてしまうのだろうか。……はっ、馬鹿だな。自分で終わりを告げておいて、胸が苦しいくらい痛むなんて。
今、苦しいのはりぃのはずなのに。
───何故、お前は引き下がらないんだ。
「行くなよバカッ!!!!」
そう叫ばれ、手に力を込めて気持ちを抑える。
ゆっくりと振り返れば、涙をいっぱい溢れさせたりぃが真っ直ぐ俺を見て立っていた。
「何故だ?」
俺も何も言わずに立ち去ればよかったはずだ。
「わかんない……けど」
「けど?」
その言葉を聞いて俺はは履いていた靴を脱ぎ、廊下の真ん中に突っ立っていたりぃの前まで来ると、その溢れた涙を拭って、言葉を待つ。
こんなにも他人の事を考えて悩んだことは、今まであったことなどない。
自分さえ良ければ全てよかった。
優しくするのも、笑うのも、触れるのも
……俺の気分で相手のことなど微塵も考えない。
俺が笑いたい時に笑えればいい。
オレが優しくしたい時に優しくすればいい。
俺が触れたい時に触れればいい。
なのに、変わってしまった。
どうすればりぃに優しく出来るのか。
どうすればりぃに笑ってもらえるのか。
どうすればりぃに触れることが出来るのか。
「全部初瑪のせいだバカァァ!!!!!!」
「泣きながらバカバカ言われても、わかんないんだが……何がいいたいんだ?」
りぃの頬に手を添えながら、目を細めて笑ってやる。せめてもの強がりで優しさ。そんなことを言われると、もう止められそうにない。
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