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初めての、好き《1》

幸せで死ねるって、今のことを言うのかもしれない。 玄関先で何をしているのだろう。 しかも、こんな夜に。 冷たく暗い廊下が、こんなにもあったかい場所に感じられる。 抱きしめられたまま、ただただ涙を流す。 悲しくない。嬉しくて嬉しくて……幸せすぎて涙が止まらない。 俺が今まで恋だと思っていたものは、何だったんだろう。恋したり付き合ったり…そんなことは数回してきたけど違う。 こんなにも嬉しいって思ったことなかった。 幸せって思ったことなかった。 「……馬鹿。泣きすぎだろう」 「……誰のせいで…ッ……泣いてると思ってん、だよ」 素直になれない俺のほんの少しの本音をこめて、ギュッとして、顔を隠す。そんな俺を見て初瑪はフッと声に出して笑うと、いつもの変わらない声のトーンで話す。 「嬉しくて泣いているのなら、俺のせいでも気分がいいな」 「ばーか」 「そんな馬鹿を好きになったのはりぃだろ?」 「……ばーか」 何だか恥ずかしくなって、うずめた顔を動かす。 「りぃ、あんま可愛いことするな」 「はっ?!」 可愛いことって何?!えっ、なんかしたの俺?! 顔をあげて訴えようとしたら、待ってましたとでも言うように初瑪が俺の顔を固定し、近づいてくる。 あ、完全にやらかした……! これ絶対キスされるパターンだ!!知ってる! そう、俺は学んだ!!! まぁ、いくら学んだと言っても、ドキドキすることには微塵も変わりない。 ぎゅっと目をつぶって待機する。 初瑪が俺に触れてる部分がやけに熱いし、さっきから心臓の音もうるさい。 ……なのに、なかなかキスが来ない。 うっすらと目をあければ、初瑪がにまにま笑みを浮かべていた。 まっ。 「フッ…期待したか?」 作戦にまんまとハマった俺に初瑪が言う。 「期待したよ!あぁ、しましたとも!!」 こんなイジワルな感じじゃなくて、甘い雰囲気になるはずなのに、それでもこうやって何も変わらない初瑪に何故か安心する。 俺の好きな初瑪は、こういうヤツだ…って。 「今日はやけに素直だな、りぃ」 いつも素直じゃなくて悪かったですね!!! って、言いたくなるけど、素直じゃないのは事実だと思うから、なにも言わずにキッと目を見る。 でもそのせいで、まじまじ顔を見ることになったから自爆した。ちゃんと見てなかったけど、めずらしく感情ダダ漏れの顔の初瑪から、恥ずかしいくらいに伝わってくる。 お、おれ、俺への……好きって、感じが(?) 「りぃ」 「…へっ、あっ、何?!」 それに気づいてじっと初瑪のこと見てたから、自分の世界に入ってて、呼ばれたことに気づくのに遅れてしまった。 俺が慌てて返事をすれば、優しい笑みを向けて、近づいてくる。 うぅ〜…! 何が言いたいってドキドキが止まらない。 いや、マジで止まらない。 告白効果か、何かわかんないけど。 好きが溢れて。

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