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玄関から始まる“こんな”生活《1》

「うぅ……っ」 ドキドキが止まんない。 やばい。これはやばい!! ベッドに戻ってはや数十分。 逃げた方がいいなんて思ったけど、俺が思っていたことと全く違く、ただ寝るだけだった。 その寝るだけという行為にも死にそうだけども。 俺を片手で胸に閉じ込め、空いてる手でそっと頭を撫で続ける初瑪。いや、何これ。ん?なんの拷問?ねぇ、これは何ですか? 俺の中ではちょっと意地悪な……まぁ、ちょっとどころじゃないかもだけど。そんな初瑪が当たり前だから、優しすぎる初瑪とか妙にそわそわするし……そんでもって、いつも以上にドキドキしてしまう。 いや、もう寝てやろう 意地でも寝よ。 でも、寝たら全部夢だった……みたいな事だったらと不安になる。今この瞬間が幸せすぎて…ほんとに夢みたいだから、もし夢だと言われても納得しちゃいそう。 やっと自分の気持ちを認めて、相手に伝えて。 それが実ったのに……起きたら全部夢だった…ってなったら、全てがゼロになる。 なら、俺の気持ちもゼロに戻ればいいのに。 そしたら、その気持ちも夢だった…ってなるのに。 なんてことを考えていると、俺の頭を撫でていた手が止まり、すっと頬におりてくる。 「余計なこと考えているだろ」 「余計なことってなんだよ?」 「寝て起きてみたら、全部夢だったらどうしよう…みたいな事考えてそうな顔してたぞ」 的確すぎてビクってなったじゃんか!おい! 「……だって、なんかまだ実感なくて。嬉しすぎてなんか夢っぽくね?」 「…っぽくない」 「えぇ〜」 ちょっと拗ねたっぽく言ってみると、それもわかってか初瑪がぎゅっと抱きしめる。 その体温が夢じゃないって思わせてくれて、温かくてさっき散々泣いたのに、また泣きそうになる。 今日はとことん涙腺脆いな俺〜!

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