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住居人は侵入者と出会う《3》
「あ、いや、ちょっと待って。1個だけ質問させて。どうやって家に来たの?」
「あ?だから、言ってるだろう。手帳の住所見て、学生証も見て、中に隠してあった鍵見つけて家の中に入って、流石に奥まで上がり込むのはまずいだろうから、玄関で待ってたら眠くなって、起きたらなんだか慌ててる馬鹿なお前がいたってわけだが」
今、なんつった…………?
おいおい、俺にキスしたことは記憶にありません的なあれか?はぁ??
「…ええと、え?お前覚えてないの?は?」
「何がだ。覚えているのは今いったことだけだが」
「あ、いや。ちょっと待って。時間くれ。考える時間をください!はい!」
おいおいおいおいおいいい!!!!!!
はぁ?
はぁ??はぁ??
何でお前は都合よくそこだけ覚えてないんだよキス男。
俺のネーミングセンスが疑われるじゃねぇか!
あっ、いや。いいのか………?
だってこいつ覚えてないんだぞ。うん。
……あっ!あれか!
こいつ寝ぼけてたのか!
そうだそうだ!
なんか動きがうつろだったし、普通の男は男にキスなんかするわけないし…………別に男と男の恋愛を俺は全くもって否定するとか拒むとか嫌悪するとか、そう言うのは全くない。
だって、ただ好きになったのが男なだけで何が悪いのかって俺は思うから…。
まぁ、自分がなったらびっくりすると思うけど。
あれ?
したら、別に一件落着じゃね?
「そうか、そうなんだなぁ~」
「どうした急に」
「いや、ちょっと納得しただけ♪」
「そうか」
キス男もとい寝ぼけ男は何かを思い出したかのように俺に質問してきた。
「お前名前は?」
「ん?俺?」
知ってるんじゃないのか?
だって学生証見たんだろ?
何でわざわざもう一回聞くんだろ。
まっ、いっか!
「俺は篠宮李絃 !えっと、高2」
「…楠初瑪 。同じく」
くすのきはつめ。
それが寝ぼけ男の名前らしい。
なんか可愛い名前してるな。
絶対口には出せないけど…!!
楠は俺の名前を聞くと納得したような顔をし、不敵な笑みを浮かべ、なんだか俺からしたら身の危険を感じる顔をした。
え、何。怖い。
楠から発せられた言葉は、俺の思いもよらない言葉だった。
「お前、小説家だろう?」
「へ?」
何でしってんの?
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