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いい者見つけた《1》side初瑪
「なんだよりぃは」
俺はりぃに聞こえないように小さな声で呟く。
こいつ面白すぎて俺がどうかしてしまいそうだ。キスをすれば驚いて何がなんだかよくわからないことを大量に口走り、最後には自己完結する。
俺が知らないふりをすればそうだと信じ、その前に叫んだり、おどおどしたり……
俺はどっちもイケる口だし、キスぐらい別になんともないからあんなにはならないがな。
それに「小説家だろ?」って聞けば、そうだと言ってるなみにテンパるし、それで脅せば明らかに自分に理不尽な約束をこじつけられているのにも関わらず「うん」と頷いてきやがる。
というか、ばれたと焦ったときの片言に喋っていたのが面白すぎて耐えるのに必死だった。
一番はキスの時のことを伝えたときの顔……!
もう、なんとも言えない。
つくづく、りぃは俺のどつぼをついてくる。
こんなに気に入ったやつを見つけたのは久し振りだこれは自分の手元におかなければだな。
もったいない。
久々にいいおもちゃを見つけた気分だ。
それと、たぶんりぃは知らないが、俺は高校入学時からりぃのことを知っていた。
俺と同じように図書館にいる日が多かったから何度か見かけている。
りぃはずっと隅でパソコンを使っていたのでそれが気になり、後ろを通ったときにチラッと覗いたら小説っぽいこと書いていたというわけだ。まだあのときは確信していなかった。
趣味でただ書いているだけという可能性もあったからな。
だが、その時書いていた内容の覚えていたセリフが、数ヵ月後に俺の読んでいる小説と同じセリフだったため、確信した。
あきらかに、あのセリフはあの小説特有のセリフだったから間違えようのないことだ。
クラスが違うし、面識もないのでずっと聞けずにいたのだ。
それが今に至るという感じだ。
りぃの仕事部屋もあれはあれで小説家っぽくて俺的にはかなりワクワクした。
……………かなり荒れていたがな。
りぃの作ってくれたおにぎりも、俺の好みの具で美味しかった。
「…ふぅ」
どこかりぃと過ごすのを楽しみにしている俺がいた。
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