32 / 174
朝になったね《2》
「初瑪~起きてっか~?」
ガチャっと寝室の扉を開けると、初瑪は布団に下半身を入れたまま座っていた。
「初瑪おはよう……って起きてるか?」
初瑪はつらつらと首をこくこくしていた。
(ちょっと表現がよくわからないな)
まだ寝ぼけてるっぽい。
目は半分虚ろだし、俺の言葉にも反応しない。
……昨日のアレからするに寝起きは弱いのか。うん。
ほんのちょっと警戒する。
ちょっとだよ?
ちょっと……
一方初瑪はこくこくするのを止め、ぽーっと俺を見ていた。
え?
何で俺、ガン見されてんの?
「ん………おはよう、りぃ」
初瑪が言った。
たぶん初瑪はここが何処だかわからなかったんだろうな。
だからしばらくぽーっとしてたんだろう。
俺をガン見していたのもそのせいだ。
「おはよう初瑪。朝ごはん食べるか?」
「…食べる」
「ご飯とパンどっちがいい?」
「…パン…」
「おう。りょーかい。あ、焼く?」
「…焼く」
「じゃあ、焼いてる間に顔とかさ、洗ってきちゃってな~初瑪」
初瑪は俺に言われたとおり、文句も言わずに俺が教えた洗面所に向かった。
……初瑪よ。
寝起きだとすごい素直なのな。
ほとんど単語で会話してたぞ。
そんなことを心で思いながら俺は、トーストをしに戻った。
数分すると完全に目が覚めた初瑪がやって来た。
「わざわざ悪いな朝から」
「いや、朝ごはんなんだし。いいよ全然」
「…りぃはもう朝ごはん食べたのか?」
初瑪はトースターの中を覗き、パンが一枚しか入っていないのを見て俺にいった。
「おー?俺?食べたな。洗濯物が終わるまで時間もったいなかったし」
「……そうか」
初瑪はほんの少しだけ残念そうにいった。
それと同時にチンッとトースターから音がし、パンが焼き上がった合図がなる。
用意しておいたお皿にトーストをのせて、初瑪に手渡す。
「ありがとう」
初瑪はトーストがのった皿をを受けとると、昨日と同じように食卓についた。
そして「パンに何かぬるか?マーガリンとイチゴジャムとか…あー、マーマレードもあるけど」と聞けば「マーガリンだけ貰うな」と言うので、コーヒーと一緒にテーブルに置く。
「前、失礼しまーす」
「ん?あぁ、構わない」
初瑪の向かいに座り、俺用のコーヒーに角砂糖を2つ入れ、じっと初瑪の顔を見る。
ともだちにシェアしよう!