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それぞれの登校《1》

「んじゃ、またな」 「あぁ」 初瑪は一旦家に帰って必要なものを取りに行ってから学校に行くと言うので、初瑪を先に見送る。こっちに引っ越してきてから初めて見送ったもんだから少し変な感じだ。 ガチャとドアのしまる音がなる。 「…ふぅ。やっとなんか落ち着ける気がする」 そんなこと言っても、もう俺が家を出る時間までほとんどなかった。 おいおいおい。 ゆっくり考えさせる時間くらいよこせよ。 「おおっ!李絃~♪おはよう!」 「おっす、おはよ。碧」 昨日碧と別れた場所で朝はいつも合う。 お互いが約束をしないでいるのに、何となく毎日一緒に学校まで通っていた。一人で行くより嬉しい。ましてや、幼馴染みの碧とだから気が楽で俺は好きだった。 「今年も同じクラスでよろしくね!」 「おう!そーだな」 小学校では何度か碧とは別のクラスになることがあったが、高校入ってからはない。 クラス発表は昨日の時点でされているので、俺と碧が今年も同じクラスはわかっていた。 初瑪は知らないけど… 基本俺は自分のクラスと碧のクラスにしか興味なく探さないから、例え初瑪と俺が同じクラスだとしても、名簿にのっていても気にしないから覚えていない。初瑪の名前を知ったのでさえ、昨日家に帰ってからだから当たり前だ。 というか同じクラスはなんというか困る。 そうだろ! だって、何時何処であの“初瑪の言葉は絶対”という恐ろしい権力を使うかわからないじゃんか! 初瑪のことだから絶対やりたくないこととか言ってくる気がしかしない。 考えたくもない。 「李絃~?どしたん?なんか難しい顔してるよ?」 「あ、いや、ちょっとな」 「ストレスとかためちゃダメだよ~?」 「新学期早々溜まりそうだよ」 「溜まったら路地裏行こっ!」 碧ときたら……はぁ 「いいですか碧くん。路地裏に行くのは困っている人を助ける時と、俺らの名が汚されそうになっているときだけですよ?ご理解できます?」 俺の教師じみた口調に、碧が歩きながら笑い始めた。 「ぷはははっ!李絃何それ~!その喋り方すっごい面白い~!」 「いや、笑ってねぇで理解したか答えろよ」 「わかってるに決まってるじゃん」 笑っていた碧の顔がそういった一瞬だけ真剣な顔になり、声が冷静に発せられた。 「ならよし!」 「ははーいっ!俺だって偉い子だも~ん!」 そういって俺と碧は少しだけ歩く足を速めた。

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