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スーパーへ《1》

キーンコーンカーンコーン チャイムがなり、用のない生徒はパラパラと「またな!」などと言って帰っていく。 「碧ー!ごめん、先帰ってていいよ」 「あ〜い!俺も今ね、同じこと言うところだったよ〜♪」 「碧は毎年この時期連れ回されてばっかだもんな」 「ふふふ、まぁね!でも、楽しいからいいよ♪」 「なら、いいけどさ…でもいいですか碧くん」 「ん?なぁに李絃?」 「友達といる時に路地裏行っちゃダメだかんな?ましてや、パーカーのフード被っちゃダメだぞ?」 碧はいつも制服の上にフード付きパーカーを羽織っている。夏なら袖なしのパーカーを着ていた。もはやフード付きパーカーは一種の碧のトレードマークになっていた。 ちなみに俺はいつも持ち歩いているリュックに裾が長めの黒いフード付きパーカーを入れてある。 「大丈夫だよ〜!心配してくれてありがとっ!」 「じゃあな、碧」 「うん!ばいちゃ〜李絃!」 碧との会話が終わり、初瑪に「帰るぞ」と言おうと思って振り向くと初瑪はまた取り囲まれていた。相変わらず人気だな初瑪は……… 「楠またな!」 「楠くんじゃあねー!」 とまぁ、普通に挨拶してくやつもいれば 「楠!今度どっか行こうぜ!」 「楠くん遊ぼうよぉー」 などと、まだ諦めがついてないのか何なのか知らないけど言っている。初瑪も行けばいいのに。じーっと見ていたのか初瑪が俺の視線に気づき、周りのやつらに「じゃあ」と言ってこっちに来る。机の横のリュックを背負い、俺は初瑪を待機していたので、初瑪も荷物を持った。 「篠宮行くぞ」 「はいはーい!」 そう言って俺と初瑪は教室を後にした。 学校を出て、俺と初瑪は俺の家の近くのスーパーに向かっていた。 そこで俺は疑問に思っていたことを聞いた。 「初瑪さ、楠って呼ばれるの嫌じゃないのか?」 「いきなりなんだ」 「俺と初めてあった時、楠って呼んだら嫌だって言ってたじゃん。なのに今日の自己紹介は楠って読んでって言ってただろ?」 俺もさっき気づいたのでよくわからないけど、なんか俺に言ってることと矛盾してたから気になったら気になってしょうがないんだよ。 言われた方の初瑪は「なんだそんな事か」とでも言いたいような平然とした顔をしていた。 「まぁ嫌だが、別に興味の無いやつに呼ばれるのは構わない。すごい嫌だってわけではないからな」 「…俺は?」 「りぃは今、一番の興味対象だな」 「どんなだよ!それ」 「なんか見てて面白いんだよりぃは」 面白いってなんだ面白いって… なんか初瑪に言われても微塵も嬉しくねぇぞ。 でも、まぁ嫌われてはないっぽいのでいいか! じゃあ、もうひとつも。 さっき学校で浮かんだ違和感の事だ。 「あっ、あと!」 「なんだ」 「人前で俺のこと“りぃ”って呼ばないのは、優しさですか?」 「…優しさかはわからないが、明日からは普通にりぃって呼ぶかな」 「いや、そこはそのまま優しさで呼ばないでいいから!」 「様子見で呼ばなかっただけだからな。あと、りぃには拒否権ないのわかってるだろ」 様子見ってなんの様子見ですか。 俺はただ単に恥ずかしいだけだわ。そんな女の子っぽい呼び方。俺は容姿だって男らしくないのにー。それに拒否権ないって……はぁぁぁ。 「俺にも人権ぐらいあるんだぞー!」 「なら、俺には約束を破る権利だってあるのかもしれないな」 「初瑪って…毎回ずるいよな!」 「まぁな」 初瑪は勝ち誇ったように笑った。 うぐぐぐぐ……! いつか、いつか俺もあんなふうに笑ってやる! 「りぃ、スーパー着いたぞ」

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