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ただの手段《1》
初瑪が一瞬何が起きたかわからないような顔をして俺を見たが、すぐにいつも通りになった。もう少し焦ってくれたっていいと思う。
「りぃ、退いて邪魔だ」
「嫌だ。俺だってちょっとは怒ってるんだぞ!」
「何?またキスされたいのか?」
「は?何言ってん…………あっ」
あまり気にしていなかったが、初瑪の無駄に整った顔が俺の目の前にあった。……俺か初瑪かどちらかが、少しでも動けば鼻と鼻が触れてしまいそうなほどの距離。これはマズイと思い慌てて退こうとするが何故か退けない。
え、何で俺に手を回して逃げれないようにしてんの?今絶対、主導権俺だったはずなのに何でものの数秒で入れ替わってるっぽいの?
え?
俺、押し倒してる側なのに何で押し倒されてる側っぽい気持ちになるの?え?
「え?何で腕回してんの?退けないんだけど!」
「退かせないようにしてるからな」
「さっきと言ってること真逆じゃんかっ!」
「りぃ、ファーストキスは?」
「は?!どんな脈絡でそうなった!」
「で?」
未だ体制は変わらずそのままなのに、ものすごい俺が負けている気分になる。
「俺でもファーストキスくらいは済ましてます!」
というかっ!
もし俺がファーストキスまだでも、お前が玄関でしたヤツがファーストキスになってるんだからこの時点では済ましてるってなるんだからな!ファーストキスが女の子でよかったよ!!
俺だって彼女くらいいたんだからな!
正直その彼女のことを俺は好きだったのかよくわからないけど…向こうから言ってきて、俺がちょっと恋心を抱きそうになった時に毎回別れよって言われるんだよな。まぁ、俺もどこかでなんか違うって思ってた部分もあるし……
って今は関係ない!!
「そうか。まさか玄関でのアレがそうとかじゃないよな?」
「ちゃんと女の子だよっ!!」
「ならいいな」
「何がいいん………っんん」
初瑪が俺に回していた手を俺の後頭部に回した。
───俺にキスをして。
「…んっ!んんっ?!」
なんで俺はまたキスされるんだよっ!!
今すぐ離れようと動こうとすると、その反動を使って逆にまたベットに押さえつけられてしまった。さっきからベットの上でゴロゴロしているようにもとれるが、今はそんなんじゃない。
俺がこんなことを考えている間にも初瑪はキスを続けていて、息が出来なくて苦しい。
初瑪は角度を変えて何度も俺にキスをする。
キスっていうか……
食べられてしまいそうな感覚に近い。
両手で初瑪を押し返そうとするも、上手く力が入らない。絶対キスのせいだろ!!いくらファーストキスが済んだからと言っても、俺は遥かに恋愛経験値のパラメーターは低い。
キスだって片手で数えれるほどしかしてない。
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