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ただの手段《2》

やっと、初瑪が口を離したと思ったら、今度はキスをしながら舌で唇をつつかれる。俺は息をするのに精一杯で逃げるのが出遅れた。 口をギュッと閉じると、温かくなっていた手をTシャツの中にれてきて、おもわず口が開くとその隙に舌をねじ込まれた。 「……っ!!」 足を全力でバタつかせ、手で背中を叩く。だが、数秒も経てばそんなことも出来なくなった。生あたたかい舌が口の中で自由に動き回る。歯ぐきに沿って舌が動き、気がつけば舌を絡めとろうとされている。必死に逃げようとするも、すぐに捕まってしまい絡めとられる。 クチャクチャと水音がお互いの口元から漏れ、どちらの唾液かわからないものが口の中で同じように音を立てる。 「……んっ……ぁ……んんっ…ぁ…ぅ」 何でこんなことされてんだろう。つーか、頭がふわふわしてきた。キス上手すぎだろ初瑪。 てか、やめろ。早くやめろよ。何でこんなことしてるんだよ。もう何が何だかわからない。 もちろん大人のキスなどしたことない俺はされるがままに口内を犯されていた。そして何だか急に不安になって、初瑪の服をギュッと握る。 なんか…………怖い。 手に力を込めると、すっと口の中の動きが止まり、呼吸が楽になった。目の前が照明で明るくなり、初瑪を見ようとするが生理的か感情からかよくわからない涙が目を覆ってぼやけて見える。さっきまでのキスのせいで呼吸が調わない。一方、初瑪は俺の上から退き、固まっている俺を起きあげさせた。 「……な、何すんの…っ!………何で…こんなこと…すんだよ…っ!」 「どんな顔するのか、と。まぁ、少しやりすぎたとは思っているが…今のお前、俺のそそる顔してる」 「……して、ない!」 「してるな。どうしてこんなことになったかわからない疑問と、何でキスされて抵抗できなかったのかという悔しさ、その今にも泣きそうな歪んだ顔はイジメたくなる顔なんだよ」 「…そんな理由でキスなんてするなよ」 キスってそんなイジメるためにするためにあるんじゃない。好きな人と愛を確かめるためだったり、好きな人と触れていたい、自分のものだって思いたいからするものだと思う。いまいち俺にもよくわからないけど、少なくともキスは遊びでそんな気持ちでするもんじゃない。 「俺にとってキスはただの手段だ。俺は恋愛などそんなことでする為だけにキスするヤツじゃない」 男とのキスならよくノーカンって言うけど、今のはそんなレベルじゃない。別に俺は初瑪のこと好きじゃないし、キャーってなるわけない。 どうしたらいいんだよ!!

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