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俺にはただの手段《1》side初瑪
「りぃ、退いて邪魔だ」
「嫌だ。俺だってちょっとは怒ってるんだぞ!」
「何?またキスされたいのか?」
「は?何言ってん…………あっ」
世界が反転され、りぃが目の前にいる。本人は気づいてないのか距離が近い。少し寄せればキスができるほどの距離だ。伝えてやるとりぃが慌てて退こうとするので、手を体に回して、退けないようにする。押し倒したくせに何故手を押さえておかなかったのかわからないが、そのおかげで手は自由だ。
「え?何で腕回してんの?退けないんだけど!」
「退かせないようにしてるからな」
「さっきと言ってること真逆じゃんかっ!」
「りぃ、ファーストキスは?」
「は?!どんな脈絡でそうなった!」
「で?」
何ならこのままキスするのが1番面白い。
だが、流石にファーストキスまで奪うのはよくないと一瞬よぎったが、ファーストキスが今の時点でまだということはあり得ないことに気づいた。俺が玄関でしているからな。
「俺でもファーストキスくらいは済ましてます!」
りぃは少し怒こったように頬を膨らませ、俺の上で言う。押し倒されているのに、全く押し倒されている感じがりぃだとしないな。やはり玄関でのことが気になるので聞いてみる。
「そうか。まさか玄関でのアレがそうとかじゃないよな?」
「ちゃんと女の子だよっ!!」
「ならいいな」
「何がいいん………っんん」
俺はりぃが言い終わる前に、体に回していた手をりぃの後頭部に回した。
─── りぃにキスをして。
「…んっ!んんっ!!」
口の隙間からりぃの驚いた声が言葉にならずに聞こえる。今すぐ離れようと動こうとしているりぃのその反動を使って俺は上下を反転した。
りぃは数度目を瞬き、なおも逃れようと考えているっぽい。俺は角度を変えて何度もりぃにキスをする。考える暇を与えないようにまで。
りぃが両手で俺を押し返そうとしているが、チカラが全く入ってなく、ただ手を置いてるだけのように感じる。顔を真っ赤にしながら、必死に俺を離そうとしている姿がまたいい。
こういうこと慣れていないんだろうな。
1度呼吸のために口を離し、次にキスをしながら舌で軽く唇をつつく。たぶんこの反応だと深いキスはしたことないんだろう。
初心か。
キスをしたことあると言っても触れるくらいだったんだなきっと。それを知ってやることが楽しくて仕方がない。りぃは受け入れたくないのか口をギュッと閉じるが、もう温かくなっていた手を先程のようにTシャツの中に滑り込ませると、おもわず少し口が開き、その隙に舌をねじ入れた。
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