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第13話

 ホテルを出て時間を確認すると、すでに午後11時を過ぎていた。さすがにあのロビーをあんな状態で横切る勇気はない。見られているわけでもないのに、マトバの言葉に素直に従っているハルキを、きっと彼は笑うだろう。  すっかり冷え冷えとした風を顔に受けながら、マンションへ続く路地裏を通る。  暗くて先がよく見えなかったが、前方から人が歩いてきているようだ。ここで人と出くわすのは珍しい。ハルキは何となく顔を上げる。  薄く明かりが差し込み、顔が見えた瞬間、以前ケイに殺されかけた、馬鹿な客だと気づいた。  あいつ、この辺に住んでるのか?  苦い気持ちになりながら、通り過ぎようとする。  相手もハルキに気づいたようで、顔が引きつった。怯えたように大回りにハルキを避け、慌てて走っていってしまった。  何だあいつ。  訝し気に振り返るが、もう男は明るい通りに出ていったのか、光の反射で姿は見えなくなっていた。

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