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第14話

 鍵を開けて部屋の中に入ると、まるで待ち構えていたかのように、インターホンが鳴り響いた。ドアを開けるとケイが立っている。彼は無言で靴をぬぐと、ハルキの肩をぐいと掴んだ。  マトバにつけられた火傷の痕をじっと見ている。ハルキはケイの腕を振り払って、手で隠した。  何か言われるかと構えたが、ケイは黙ったままキッチンへ向かう。すこしほっとして、ほっとした自分に嫌気がさして、寝室に向かった。  夕食が出来たと声をかけられて、ハルキはリビングへと出て行った。  ケイは相変わらず黙ったままだ。  黙々と冷えた空気の中で食事を取りながら、ちらりとケイをうかがう。ケイは無表情のままで、箸を口に運んでいた。  いたたまれない食事を終えて、ハルキはソファに座ってぼうっとしていた。マトバにつけられた火傷の痕はまだじくじくと疼いている。  コーヒーを持ってケイが隣に座る。彼が隣に来るのは珍しかった。なんとなくカップを持て余しながら、二人して押し黙っていると、段々耐えられなくなってきて、ハルキは腰を上げようとした。 「あなたは」  ケイが静かに呟く。  ハルキは座りなおして次の言葉を待った。 「どうして死にたいと思っているのですか?」  すぐには答えられなかった。  再びの沈黙の末、訥々と昔の事を語る。  ケイは何も言わずに聞いていた。

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