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第19話
食事を終え、ソファでぼんやりとしていると、じくじくと痛む足が気になってくる。痛み止めは飲んだのだが、すぐには効かないようだ。
しばらくして、薬が効いてきたのか、あまり気にならなくなってきた。今のうちに動いてしまおうと、立ち上がって風呂場に行こうとする。と、またケイが「どこへ行くんですか」と聞いてきた。
「風呂だよ。いちいち確認しなくても外には出れねえよ」
「では私も一緒に」
目の前で光がはじけた。
「は!?」
「一人では辛いでしょう。滑ったりしたら危ないです」
瞬間的に頭が沸騰して、顔面が熱くなった。隠す余裕もない。
「い、いい、いい、いい。ついてくんな!」
ケイの言葉を固辞して廊下へ出ようとする。彼はなかなか引かなかったが、最終的に少し不満そうな顔をして諦めた。
リビングのドアを閉めると、ハルキはばくばくと脈打つ心臓を押さえつける。
一緒に、風呂に、入る?
何言ってんだよ。
何言ってんだよ。
震える腕と紅潮する顔。呼吸が荒くなるのをなんとか押さえて、ケイに気づかれないように急いで風呂場に向かった。
まさか、服を脱いで、とか。
いやいやいやいや。そんなわけない。
そんな甘ったるいものではない事はわかっていたが、妄想が止まらない。
自分の体を見られるのも、ケイの体を見るのも、恥ずかしすぎて死にそうだ。
下着をずりさげられて転がっている姿を見られていた事も忘れ、ハルキはおかしな考えを追い出そうと、頭をぶんぶんと振った。
ケイの言う通り、確かに風呂に入るのは大変だった。ぐったりとソファの背もたれに体を預けていると、ケイがホットミルクを持ってくる。コーヒーがいいと言ったが、もう入れてはくれなかった。
「ベッドで横になっていた方がいいですよ」
そう言われてハルキは立ち上がる。と、よろめいて倒れそうになった。
素早くケイが体を支える。胸に抱きとめられて、ハルキの頭が真っ白になった。
「大丈夫ですか?」
耳元で声がする。
近い、近い、近い。
顔が近い。
ハルキは硬直して動けなくなった。
「寝室にいきましょう」
うなじに息がかかる。
ぶわっと鳥肌がたって、パニックになった。
「や、あの、だ、大丈夫だ、から。離せ」
しかし意に反して、さび付いたロボットのように体はぎしりとも動かない。
ケイはハルキを抱えるようにして、寝室まで連れていき、ベッドに寝かせた。
駄目だ。きっと見られている。
いちいち真っ赤になっている顔を。
恥ずかしい。
礼もそこそこに、ハルキは枕に顔をうずめた。
やばい。やばい。やばい。
これ以上触れられると、俺の頭はパンクする。
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