3 / 13

アルバム事件

ダイニングの椅子に座り、久々にアルバムを見る。 それらを見てると...どうもおれが笑っている写真が少ないことに気づいた。 不機嫌な顔、というより...なんて言うか、盗撮みたいな感じで、カメラの方向を向いていないんだ。 「...?」 それも.........小さい頃から中3くらいまでが大体盗撮みたいな写真になっている。 そういえば、おれあんまり写真取られたことないなぁって。しかも、中3とか反抗期...いや、反抗期でもないけど、とにかくおれが逃げ回っていた時期の写真まであるのが不可解だ。 「ねぇ、朔」 不思議に思ってソファーに座りパソコンで仕事のスケジュールを書いている朔に問いかけた。 「このアルバム、なんでおれカメラの方向いてないの?」 「あー......まぁ、ちょっと」 歯切れの悪い返答にさらに不信感が増す。 「もしかして...これ、隠し撮りだったりする?」 「......」 朔は一瞬おれをちらりと見てまたパソコンに目を戻した。 本気で、隠し撮り...? 「それ...小さい頃は結花子が撮ったやつだからな?隠し撮りじゃない」 「え、母さん?」 母さんが、撮ったの?この写真を? 「おれ、全然カメラ見てないけど...?」 「譲は小さい頃写真嫌いだったからなぁ。カメラ見ると大泣きしてたんだよ」 「え?!」 全く記憶にない。カメラが嫌いだっただなんて初知りだ。 「結花子、いっぱい譲の写真を撮るんだ!って張り切って一眼レフ買って。でも一眼レフ見て、譲泣きわめいてさ。その時の結花子の絶望的な顔と言ったら...」 笑い始めた朔が仕事を中断し、おれに向かって携帯を向ける。話の脈略からみて、カメラアプリでも開いているんだろう。すぐさま顔を隠す。 「やめて」 「撮らせろ」 「いやだ!」 ぱしゃしゃしゃしゃ、と連射の音が響く。 「やだってば!ちょ、消せ!」 「今からパソコンに保存する」 「やめろ!」 ソファーで朔の携帯をもぎ取ろうと乱闘する。その時、朔が何を思っていたのか知りもしないで。 (なんとか誤魔化せたか。まさか、結花子が亡くなった後の写真の殆どが本当に隠し撮りだなんて、言えるはずもないもんな。パソコンにまだ、寝顔とか着替えの写真とか風呂の写真とか入ってるとか......) fin

ともだちにシェアしよう!