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アルバム事件
ダイニングの椅子に座り、久々にアルバムを見る。
それらを見てると...どうもおれが笑っている写真が少ないことに気づいた。
不機嫌な顔、というより...なんて言うか、盗撮みたいな感じで、カメラの方向を向いていないんだ。
「...?」
それも.........小さい頃から中3くらいまでが大体盗撮みたいな写真になっている。
そういえば、おれあんまり写真取られたことないなぁって。しかも、中3とか反抗期...いや、反抗期でもないけど、とにかくおれが逃げ回っていた時期の写真まであるのが不可解だ。
「ねぇ、朔」
不思議に思ってソファーに座りパソコンで仕事のスケジュールを書いている朔に問いかけた。
「このアルバム、なんでおれカメラの方向いてないの?」
「あー......まぁ、ちょっと」
歯切れの悪い返答にさらに不信感が増す。
「もしかして...これ、隠し撮りだったりする?」
「......」
朔は一瞬おれをちらりと見てまたパソコンに目を戻した。
本気で、隠し撮り...?
「それ...小さい頃は結花子が撮ったやつだからな?隠し撮りじゃない」
「え、母さん?」
母さんが、撮ったの?この写真を?
「おれ、全然カメラ見てないけど...?」
「譲は小さい頃写真嫌いだったからなぁ。カメラ見ると大泣きしてたんだよ」
「え?!」
全く記憶にない。カメラが嫌いだっただなんて初知りだ。
「結花子、いっぱい譲の写真を撮るんだ!って張り切って一眼レフ買って。でも一眼レフ見て、譲泣きわめいてさ。その時の結花子の絶望的な顔と言ったら...」
笑い始めた朔が仕事を中断し、おれに向かって携帯を向ける。話の脈略からみて、カメラアプリでも開いているんだろう。すぐさま顔を隠す。
「やめて」
「撮らせろ」
「いやだ!」
ぱしゃしゃしゃしゃ、と連射の音が響く。
「やだってば!ちょ、消せ!」
「今からパソコンに保存する」
「やめろ!」
ソファーで朔の携帯をもぎ取ろうと乱闘する。その時、朔が何を思っていたのか知りもしないで。
(なんとか誤魔化せたか。まさか、結花子が亡くなった後の写真の殆どが本当に隠し撮りだなんて、言えるはずもないもんな。パソコンにまだ、寝顔とか着替えの写真とか風呂の写真とか入ってるとか......)
fin
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