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第25話 怒りの兄②

「ど、どこって、だから裕二のとこへ――」 「どうして嘘を言うんだ!?」 「えっ……!?」  ば、ばれてる……? 「嘘までついて、どこのコンサートへ行ってきたんだ?」  やっぱり全部ばれてる……。 「知矢っ!」  めずらしく激昂した兄は死ぬほど怖かった。  知矢はほとんど条件反射のように答えていた。 「……コンサートには行ってない。神社へ行ってた……」 「……神社……?」  典夫が訝し気な表情をする。 「なにしに?」 「……なにしにって、お願い事しに行ってたんだよ。すごいご利益があるって、クラスメートが話していたから……」 「神社へお願い事するために、一泊もかけて?」 「……日帰りじゃどうしても無理だったから」  典夫が不機嫌と呆れの混じった溜息をつく。 「そこまでして、なんのお願いしてきたんだ?」 「…………」  怒っている兄が怖くて。  知矢の気持ちをこれっぽっちも分かってくれていないのが悲しくて。  涙があふれてくる。 「知矢?」  知矢の涙を見て、典夫から怒りのオーラが消えた。 「おにいちゃ……が……るなんて、言うから……」 「え?」 「お兄ちゃんが一人暮らしをするなんて言うから……!」 「知矢……」 「いやだもん。僕……お兄ちゃんがこの家からいなくなっちゃうなんて……だから……一生懸命お願いしてきた。お兄ちゃんがこの家からいなくなりませんようにって。いつまでもお兄ちゃんといっしょにいられますようにって」  それから。  これは口には出せないけれども……、  ……できることなら、お兄ちゃんと恋人同士になれますようにって……。

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