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第24話 怒りの兄

 日曜日。  知矢は上機嫌で帰路についていた。  目的だったとてもご利益があるという神社は、なるほどとても空気が清浄な空間だった。  知矢は神社で、兄が家を出て行かないように熱心にお願いし、縁結びのお守りを二つ購入した。  ……一つをこっそりお兄ちゃんの部屋に忍ばせておこう。  そしたら、二人お揃いでお守りを持っていることになる。 「ただいまー」  るんるんと玄関の扉を開けた知矢を待っていたのは、激しい怒りの表情を張り付かせた典夫だった。 「えっ……? お、お兄ちゃん?」  顔が端整な分、典夫が怒ると迫力がある。  知矢はなぜ兄が怒っているのか分からないまま、すくみあがった。 「ちょっと、来い、知矢」  そのまま腕をつかまれ、半ばひきずられるようにしてリビングへ連れて行かれる。 「な、なに? お兄ちゃん。どうしたの? ……お父さんとお母さんは?」  知矢は両親に助けを求めようとしたが、 「父さんはゴルフ、母さんは映画」  不機嫌も頂点の声で典夫は言った。  典夫は知矢をソファに座らせると、自分はその前に立ちふさがる。  「……知矢、おまえ、いったいどこへ行ってた?」  静かだけれど、激しい怒気を孕んだ声で兄が聞いてきた。

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