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第27話 愛の告白

 知矢は涙を拭うとさげていたリュックを降ろし、その中から縁結びのお守りの袋を一つ取り出すと、兄の手に押し付けた。 「これお土産……」  涙の残る声でそう告げると、立ち上がり足早に兄の横を通り抜ける。 「知矢……?」  後ろから戸惑いをまとった兄の声が追いかけてきた。  知矢はありったけの勇気と声を振り絞って伝えた。 「それ、僕とお揃いなんだよ」  自室のベッドに腰かけ、知矢は駆け足を続ける鼓動を必死になだめていた。  お守りを渡し、自分とお揃いと言ったのは、知矢なりの愛の告白だった。  お兄ちゃんは気づいてくれる? くれない?  気づいても、気づかないふりをするかもしれないね……。  知矢は自分の手の中に握ったピンク色のお守りに視線を落とす。  どちらにしろ知矢はもう限界だったのだ。  兄が好きで好きで、想いが育ちすぎて、伝えないことには本当に胸が張り裂けそうだった。  恋が破れたとしても、お兄ちゃんはやさしいから兄弟の絆は切らずにいてくれると思う。  僕の居場所はきっと残してくれるだろう。  そのときはお兄ちゃん、僕もがんばって『弟』になるから。  だから、お願い。  この家からいなくならないで。  せめてお兄ちゃんを見つめていさせて。

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