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第29話 抱擁②

 典夫は弟を強く強く抱きしめた。  さっき知矢にお守りを渡され、それを見た瞬間、典夫は知矢の思いを知った。  知矢もまた典夫のことを思ってくれていると。  自分はどうしても一歩を踏み出せなかった。  でも、知矢はありったけの勇気を振り絞って、お守りを渡してくれたのだ。  おまえに告白をさせるなんて、兄として情けないよな。  だから、この先はオレが勇気を出すよ。  典夫は抱きしめた知矢の耳元で囁いた。 「知矢……好きだよ……」 「お兄ちゃ……」 「ずっとずっと好きだったんだ、おまえが。でもオレたちは兄弟だから言えないでいた……。でももう抑えられない。知矢、好きだよ。恋をしてる。おまえに……」  知矢の瞳にまた涙があふれる。 「ほんとに……? お兄ちゃん……」 「ああ……誰よりもおまえが好きだよ……」 「……僕も……お兄ちゃんが、好き……」  知矢が泣きながらギュッとすがりついてくる。 「知矢……」 「お兄ちゃん……」  そして、そっと唇を触れ合わせた。

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