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第42話 プロポーズ
「おまえが、一人旅をしてまでお願いしてきてくれたことだし」
「じゃ、じゃあ、お兄ちゃん」
「ああ。一人暮らしはやめにするよ」
「ありがとうっ、お兄ちゃん」
大きな瞳をウルウル潤ませる知矢が愛しくて、典夫は体をかがめると華奢な体を抱きしめた。
「ま、エッチしたくなったら、ラブホ行けばいいんだし」
耳元で言うと、知矢は見事に真っ赤になった。
「ラ、ラブ、ラブホって……」
「知矢、おまえ、さっきまであんなにあられもなく乱れていたくせに、ラブホくらいで赤くなるなよ」
そう言ってからかうと、知矢は典夫のことを思い切りつねってきた。
「お兄ちゃんっ……」
「いたた……。ごめん。もう言わないから。知矢がすごくエロかったなんて」
「お、お兄ちゃんっっ!!」
ますます赤くなる知矢。トマトみたいに真っ赤になっている弟を真っ直ぐに見つめながら典夫は囁いた。
「本当、かわいいな、知矢。……な、オレがこの家を出るときはおまえも連れて行くよ? 二人いっしょに暮らそう」
「お兄ちゃん……」
知矢の大きな瞳に、みるみるうちに大粒の涙があふれてくる。
「プロポーズ、みたい……」
涙声で呟く。
「プロポーズだよ……オレは一生おまえといっしょにいたいから」
典夫は言葉を重ねると、知矢の唇にそっと誓いのキスをした。
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