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第44話 禁断の関係の始まり②
階下で玄関のドアが開く音がした。
どうやら母親が帰ってきたようだ。
典夫はもう一度、弟の体を強く抱きしめると、名残りを惜しむようにゆっくりと離れた。
「お兄ちゃん……」
すがるような瞳で典夫を見つめる知矢。
「そんな目で見るなよ。また抱きしめたくなるだろ? ……おまえはそのまま寝てろ。母さんにはおまえが嘘言ってたってことは話してないし、テスト勉強で疲れて寝てるって言っとくから」
「僕、もう大丈夫だからいっしょに行くよ」
知矢はそう言って体を起こし、ベッドから出ようとして、ふらついた。
「危ないっ」
典夫は慌てて、知矢の体を支える。
「ご、ごめん、お兄ちゃん。なんか足に全然力が入らなくて……」
「だからまだ寝てろって言っただろ。本当ならお姫様抱っこでもしてやりたいところだけどな」
「お、おとなしく寝てる」
『お姫様抱っこ』という言葉に反応して真っ赤になる知矢。
「ああ。……すぐに戻って来るから」
典夫はそう言うと、知矢の頬にチュッとキスをしてから、部屋を出て行った。
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