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第45話 夢みたい
典夫が階段を下りていく音を聞きながら、知矢はいまだ信じられない思いでいた。
……僕、本当にお兄ちゃんと結ばれたんだよね。
なんだか夢みたい。
ずっと片思いしてて、これから先も片思いで終わる恋だと思っていたのに、まさかお兄ちゃんも僕のこと思っててくれたなんて……。
そのうえ、お兄ちゃんとエ、エッチまでしちゃったなんて……。
あのときの自分の痴態を思い出すとたまらなく恥ずかしかったが、それ以上に幸せだった。
お兄ちゃんの腕の中にいるととても安心できる……。
これからはお兄ちゃんの腕の中が僕の居場所だって、思っていいんだよね?
ノックの音がして、典夫が戻ってきた。
「母さんにはテスト勉強で疲れて眠ってるって言っといたよ。晩飯の支度ができたら起こしに来るってさ」
兄はそう言うと、知矢のベッドの傍に座った。
「それまでゆっくり休んでろ」
「うん。お兄ちゃん」
知矢はベッドの中で両腕を広げて、兄に抱擁をねだった。
体をかがめてギュッと抱きしめてくれる典夫。
「お兄ちゃん、好き……。大好き」
知矢が典夫を抱きしめ返しながらうっとりと呟くと、兄が困ったような表情をした。
「おまえな、そういうかわいいこと言うと、またしたくなるだろ?」
「え……?」
真っ赤になる知矢。
「部屋に鍵が欲しいよな……そしたら、思う存分イチャイチャできるのに」
「うん……」
それは知矢も同感だ。
「でも、いつドアが開けられるか分からない状態っていうのも、スリリングでいいかもな」
典夫がにやりと笑う。
「も、もう、お兄ちゃんてば……」
「ふふ……」
兄がやさしく笑って、今度は唇にふわりとキスをくれた。
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