45 / 54

第45話 夢みたい

 典夫が階段を下りていく音を聞きながら、知矢はいまだ信じられない思いでいた。  ……僕、本当にお兄ちゃんと結ばれたんだよね。  なんだか夢みたい。  ずっと片思いしてて、これから先も片思いで終わる恋だと思っていたのに、まさかお兄ちゃんも僕のこと思っててくれたなんて……。  そのうえ、お兄ちゃんとエ、エッチまでしちゃったなんて……。  あのときの自分の痴態を思い出すとたまらなく恥ずかしかったが、それ以上に幸せだった。  お兄ちゃんの腕の中にいるととても安心できる……。  これからはお兄ちゃんの腕の中が僕の居場所だって、思っていいんだよね?   ノックの音がして、典夫が戻ってきた。 「母さんにはテスト勉強で疲れて眠ってるって言っといたよ。晩飯の支度ができたら起こしに来るってさ」  兄はそう言うと、知矢のベッドの傍に座った。 「それまでゆっくり休んでろ」 「うん。お兄ちゃん」  知矢はベッドの中で両腕を広げて、兄に抱擁をねだった。  体をかがめてギュッと抱きしめてくれる典夫。 「お兄ちゃん、好き……。大好き」  知矢が典夫を抱きしめ返しながらうっとりと呟くと、兄が困ったような表情をした。 「おまえな、そういうかわいいこと言うと、またしたくなるだろ?」 「え……?」  真っ赤になる知矢。 「部屋に鍵が欲しいよな……そしたら、思う存分イチャイチャできるのに」 「うん……」  それは知矢も同感だ。 「でも、いつドアが開けられるか分からない状態っていうのも、スリリングでいいかもな」  典夫がにやりと笑う。 「も、もう、お兄ちゃんてば……」 「ふふ……」  兄がやさしく笑って、今度は唇にふわりとキスをくれた。

ともだちにシェアしよう!