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第47話 ラブラブ

 翌朝、知矢が目を覚ますと、既に典夫はベッドにいなかった。  月曜日は朝早い講義を取っているので、先に起きたのだろう。  そういえば、と知矢はまだ半ば眠りの世界にいる頭で思い出す。  ちょっと前、お兄ちゃんが、「先に起きるよ、知矢」と耳元で囁いて、ほっぺにキスをくれたっけ……。  眠たい目をこじ開け、ベッドサイドにある時計を見ると、七時ちょっと前。  もう知矢も起きなければいけない時間だ。  眠気に負けそうになるのをなんとかがんばり、半身を起こすと、七時に鳴る予定の目覚ましをとめた。  うーん、と大きく伸びをして、ベッドから降りる。  体の奥に感じる昨日の情交の名残りの感覚を、愛おしく思いながら、知矢は着替えを始めた。  パジャマの下の素肌には兄が刻んだ愛の印が幾つも残り、恥ずかしくも甘く幸せな気持ちになる。  部屋を出たところで典夫とばったり鉢合わせた。 「おはよ、知矢」 「お、おはよう、お兄ちゃん……」  昨日、恋人になったばかりの兄。知矢はなんだか気恥ずかしくて、まともに顔を見れない。  それはどうやら兄も同じだったようで、端整な顔にかすかに朱を走らせている。 「急がないと遅刻するぞ」  典夫の大きな手で頭をぽんぽんされる。 「うん。お兄ちゃんはもう大学、行くの?」 「ああ」 「……今日はバイトの日だよね? できるだけ早く帰って来てね、お兄ちゃん」 「分かった。……行ってきます」  そう言うと兄は知矢の唇に素早くキスをした。 「い、い、行ってらっしゃい……」  な、なんだか新婚の夫婦みたい……。  知矢はそんなことを思い、朝っぱらからトマトのように真っ赤になった。

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