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第6話 嫉妬
典夫がその場面を目撃したのは、大学からの帰り道、近道の公園を通ったときだった。
その公園は昔は綺麗で市民の憩いの場所だったのだが、駅の反対側に新しい公園ができた途端さびれてしまった。
今では遊具はさび付き、雑草は生え放題でほとんど利用する人がいない。
野良猫が古いベンチで昼寝をしているのを横目に歩いていると、うっそうと茂った木々の向こうに知矢の姿を見つけた。
「あれ? 知矢?」
あいつ……、普段からこの公園は通らないようにと言ってあるのに……。
なんせさびれた公園である。変質者がひそんでいるかもしれない。
知矢は女の子みたいな顔をしているし、体も華奢である。
痴漢や変質者に狙われても不思議ではない。
「知――」
典夫が声をかけようとしたとき、その声は聞こえてきた。
「あたし、知矢くんが好きなの。だからつき合ってください」
そう、知矢は一人じゃなかった。もう一人木の陰に女の子がいた。
制服から見て、知矢と同じ高校の女の子のようである。
「え……でも、僕は……」
「返事はいつでもいいから……!」
女の子は知矢の返事を聞くことなく、足早に去ってしまった。
その場に一人残された知矢は小さな溜息を落としたあと、不意に顔を上げこちらを見た。
典夫と知矢の目と目が合う。
知矢は大きな目をさらに大きく見開いた。
「お兄ちゃん……!?」
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