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第16話 強引なキス②
我に返ったような典夫の顔。
「……ごめん……酔ってた……」
兄はそう言うとソファから降り、リビングから出て行ってしまった。
階段を上る音、部屋のドアが開けられ閉められる音。そして静けさ。
知矢はソファに横たわったまま動けないでいた。
「……っ……う……」
涙があふれる。
夢にまで見たお兄ちゃんとのキス……僕のファーストキス。
でも、あんな形でのキスなど勿論うれしいはずがない。
それどころか最低だった。
『……ごめん……酔ってた……』
兄のあの言葉が知矢の胸をえぐるように傷つける。
知矢はそのままソファの上で泣き続けた。
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