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第17話 抑えられない
同じ頃、典夫はベッドの上に体を投げ出し、後悔のどん底にいた。
……オレはなんてことを……!
酔って知矢への劣情をまぎらわせるどころか、酔っていたせいでストッパーがきかなくなってしまった。
倒れ込んだソファの上、目の前に愛する人の顔があって、もう抑えられなかった。
次の瞬間にはキスをしていた。
知矢の唇はとても柔らかくて、いい香りがして……。
キスをしながらあいつの体をまさぐった。
そして知矢に突き飛ばされて、思い知った。自分がどれだけ罪深いことを知矢にしたのか。
あいつ、ひどく傷ついた瞳でオレを見てた……。
「最低だ……オレ」
呟いて、血がにじむほどきつく唇を噛みしめる。
だめだ。
このままじゃオレ、いつか本当に知矢のことを襲ってしまう。
知矢のことをこれ以上傷つけたくない。
どうすればいい……?
どうすれば……。
翌朝、知矢の目は真っ赤だった。
ずいぶん泣いたのだろう。
典夫の胸が激しく痛んだ。
だが、典夫はあえてなにも憶えていないふりをした。
卑怯かもしれないが、そうしないと兄弟の絆が壊れてしまうと思ったから。
……オレの邪な思いを知矢に気づかれてはいけない。絶対に。
だから典夫は逃げることを選んだのだった。
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