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第20話 自制
……おまえを愛してるんだ。
衝動的に知矢を抱きしめてしまったが、その言葉は渾身の自制で抑えつけた。
典夫の腕の中にすっぽりおさまってしまう華奢な弟。
知矢の全てが狂おしいほど愛おしくて、全てを自分のものにしてしまいたくて。
もう限界だった。
典夫は今一度、愛しい人の体を抱きしめる腕に力を込めてから、彼を解放した。
知矢は涙を溜めた大きな瞳を見開いて、典夫を見ていた。
その表情は切なくなるほどかわいい。
典夫は知矢の涙を指で拭ってやってから、自室へと入った。
部屋の中ドアに体を預けながら、典夫は強く思う。
一途にオレを慕ってくれる知矢。
おまえのその気持ちが、オレと同じ種類のもの……恋……だったら、どんなにいいだろう。
おまえがオレに恋愛感情を持っていてくれたなら、オレはどんな禁忌も怖くないのに――――。
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