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第22話 弟の決心②

 家に帰って、女子生徒たちが言っていた神社をネットで調べてみると、案外遠く、日帰りで帰ってくることは無理そうだ。 「ということは、泊りで行くしかないかー」  呟いてから、本棚の奥に置いてある貯金箱を取り出す。  この貯金箱には五百円玉ばかりを貯めている。きっとそれなりの金額が貯まっているはずだ。  軍資金はこれでオーケイと。  あとは……。  知矢はネットで安全かつ安い宿を探し始めた。 「ねえ、お母さん、今度の土曜日、裕二のところへ泊まりに行ってもいい? テスト勉強二人でするんだ」  知矢は夕食の席で母親にそう願い出た。  その夜は父親は残業、典夫はアルバイトでおらず、母親と二人での食事だった。 「裕二くんのところ? 向こうのおうちに迷惑じゃないの?」 「うん。裕二んところ、ご両親とも仕事で遅いし、二人で勉強するほうがはかどるし」  裕二はこの家にも何度も遊びに来ていて、信頼されているので、今回は共犯者になってもらうことにした。  裕二には、『コンサートを観に行くために一泊旅行したいんだけど、絶対に親は許してくれないから』とお願いして、既に了承してもらっている。 「そう。いいわよ。しっかり勉強してらっしゃい」  母親に嘘をついていることに胸がチクりと痛むが、一人旅をしたいと言ったら、絶対に許してもらえないだろうからしかたない。  知矢にしてみても、一人で泊りがけの旅行になど行ったことがないから、正直言ってとても心細く不安である。  でも、このときの知矢はひどく思いつめていたし、思い込もうとしていた。  小心者の自分が勇気を出して、一人で旅行をし、ものすごくご利益があるという神社へ行ってお願いすることで、兄が一人暮らしをするのをやめてくれると。

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