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「ちょっと、成り行きで…………大学が、一緒なんですけど…」 「大学」 「あんたが俺を拉致した現場。あれが大学。俺がこの三日間いけてない場所」 「大学……行きたいの?」 「いや、そりゃあお金払ってるわけだし当然……じゃ、なくて!違うでしょ、今はあんたの話をしてんの。俺の話はいいから」 どんどん趣旨から離れた話になる前に、と軌道をもとに戻して、俺は芳晴さんをじっと見つめた。人間じゃないから、人間の気持ちが分からない。そして、俺に好かれるためにどうするべきか分からない。と。 「朔?」 「芳晴さんは、鬼なんですか」 「そうだよ。少しだけ鴉系の血も混ざってるから純粋に鬼ってわけじゃないけど」 「………鴉」 「羽は生えないよ」  僕はね。と小さく言葉を続けて、芳晴さんはふふっと笑う。 「見た目は人と変わらないよ。そういう風に「教育」をされてるから。でも確かに人じゃないし、怒ると髪の色銀色になるんだ。銀髪の僕も美しいよ?」 「でしょうね」 元々がきれいなんだからなんでも似合うだろあんたは。と思うけど口にはしないでおいた。 「僕にはね、朔。お前だけだったんだ」 「は?」 「三日、か。僕的にはすごく早く感じたんだけど……。舞い上がってたからかな。柄にもなくはしゃいじゃって、朔の気持ちを無視してたのかもしれない。ごめんね」 「………別に、いいですよ」 「ほら、朔はそうやって優しいから。だめだよ。僕はお前しか欲しくないんだから、離れたいなら突っぱねないと」 ね?と芳晴さんが少しだけかなしそうに笑った。 「俺、別に芳晴さんが嫌いなわけじゃないですよ。ただ、理由や、事情を最初から話してくれてればよかったなって思うくらいで」 「…………うん」 「芳晴さん?」 心なしか、少しばかりへこんでいるような気がする芳晴さんは、小さく俺の名前を呼んだ。 「……ねぇ朔」 「はい」 「たまに、ここに戻ってきてくれるって約束してくれるなら、好きなところに行ってもいいよ」 「…………は?」 たまにと言われても、住んでたアパートは解約されてるから、正直な話、今はここ以外に行く場所がない。バイトは新しく探せばいいけど、でも。 「芳晴さん、結構へこんでます…?」 「――――へこんでるっていうか、反省してるっていうか……朔に何をすれば喜んでもらえるか考えてる。何をするにしても朔が嫌なら意味がないし、それに僕、結構本気で朔が欲しいから……どちらかと言えば早く既成事実は欲しい」 「後半にかけて欲望全開じゃないですか」 「だって、好きだし。好きと言うかもはや愛だし。僕って結構独占欲強いから、他に目がいかないくらい僕だけ見てほしいっていうのが本音」 「っ、俺、なんでそんなに好かれてんすか?」 ド直球な物言いに少しだけ顔に熱が集まるのを感じながら、頭をがしがしとかいた。本当に俺は三日前にあっただけの赤の他人だし、芳晴さんが過去に俺にあったことがあっても、全然、まったく、まるで記憶にない。

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