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それは新事実だ。行方不明だった?どうして?親を殺したから、と言う事なのだろうか。そもそも芳晴さんが親を殺したのはいつの話?俺に会いに来たのは、どうして?
「……芳晴さんは、」
どうして、俺に会いに来たのだろう。そう口にする前に、寝室の方から何かが割れる音がした。
「⁉」
ソファに座ったままの鬼城が「あーあ」と呆れたように笑って、立ち上がる。何が起きているのかわからないまま、俺は寝室に向かった。
「芳晴さん⁉」
あけ放たれた寝室の扉に、一瞬の強い風が吹いて、思わず視界を腕で覆う。
「…………、来ない方が、いい」
さっきの赤髪の男の人が俺の前に立って、小さくつぶやいた。でも、明らかに様子がおかしい。今まで、こんなことは無かったし、さっきまで芳晴さんは普通だったのに。
「っ、」
廊下まで散らばったガラス片に、窓ガラスが割れたんだと理解して、目の前の男を押しのける。と、
「……………よしはるさん?」
――――――銀髪の僕も美しいよ?
目が金色に光る、長い銀髪の「鬼」がそこにいた。
ハニーブラウンの髪が銀髪に光って、目は金色だ。荒く息を繰り返す芳晴さんは、こんな状況でもとても綺麗だった。背後の窓ガラスが割れていて、僅かに血の匂いがする。
「風邪じゃない。これは毒だ」
「毒…?」
「そう」
赤髪の男の人は、近づかない方がいい。そう小さくつぶやいた。でも、こんな状態の芳晴さんを放っておくのは、俺には、
「……………芳晴さん、」
小さく名前を呼ぶと、目線が合う。金色の瞳が揺れて、芳晴さんがわずかに目を見張った。
「さ、く」
震える声が聞こえて、はい、と返事をする。もう一度、さく、と名前を呼ばれてまた返事をした。
「皇、目をつむって、深呼吸をして、眠るだけだ」
赤髪の男の人がゆっくりとそう言い、芳晴さんは少しだけ男をにらんだ。俺に向けたことのないその表情に、さっきの鬼城の言葉を思い出す。「好戦的」だと。俺の知らない芳晴さんが、そこにいた。
「……………………………さく、」
「はい」
「て、にぎって、ねる、から」
「うん」
芳晴さんが伸ばした手を取り、ベッド脇に腰かけた。目を閉じて横になる芳晴さんの手をぎゅっと握って、髪の色が銀色からハニーブラウンに戻るのをじっと見つめた。本当に、人じゃないんだ。
俺とは、全然違う。
「―――猛獣使いみたいだな、お前」
事の成り行きをずっと見ていた鬼城がそう言って笑って、俺はむっとしながら見返した。
「…………皇は扱いが難しい」
赤髪の人がつぶやいて、俺はそういえばと口を開いた。
「すみません、ありがとうございます。来てもらったのに名乗ってもなかった」
「俺は、戒。シロから聞いてきた」
「戒さん、俺は朔です」
戒さんは、小さくうん、と返事をするとそれからと言葉をつづけた。
「皇の毒は、恐らく昨夜に盛られたものだと思う。目が覚めたら、傍にいてあげてほしい」
「――――――昨夜、」
「窓ガラスは百目鬼が直してくれるから、皇の目が覚めたら行くように伝えて」
それじゃあ、と背を向けた戒さんに、あの、と思わず声をかけた。
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