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第44話

次の日、花園さんは「ちゃんとトゲは取ったんでしょうね」と言わんばかりの目線をこちらに向けながら、作業を始めた。 余った花で作った花束も、「まぁ、無料で渡す花束だし、そんな感じでいいんじゃない」と適当な返事をされた。 正直、腹が立つけど、今は我慢だ。 このパーティーが終われば、暫くは顔を合わせずに済むんだから。 デザインがほぼ決まった中で、フラワーアレンジメントが進んでおり、花園さんの会社の社員さんも来てくれていたので、僕はほとんど何もしないまま、仕事が終わってしまった。 花を飾り終わると、高村さんに声をかけられる。 「お疲れ様でした。佳純くんの仕事はほとんど終わりました。経費で落とせるものを確認したいので、一度本社まで来てもらってもいいですか?」 「はい!」 高村さんの後に着いて、裏口から出ると、トラックが何台か止まっていた。 荷台からはひんやりとした空気が流れてくる。 どうやら魚などを運ぶ冷凍庫のついたトラックらしい。 「うわぁ……明日使う食材ですか?」 「ええ、料理もこの式場のメインですので。新鮮な海の幸を北海道から取り寄せているんですよ」 「北海道から!?それは、すごいですね……」 「佳純くんも当日ご招待するので、食べてみてくださいね」 「え!?僕も……?いいんですか?」 「もちろん。佳純くんも頑張って、このパーティーに尽力してくれた一人ですから」 まさか、パーティーに参加できるなんて思ってなかった。 尽力してくれた一人という言葉が、誇らしくて嬉しい。 車に15分くらい乗って、本社に着いた。 本社には、多分望さんもいる、よね? 会ったら、どうしよう……どんな顔して、会えば……。 「佳純くん、着きましたよ」 「あっ、はい!!」 慌てて車から降りて、高村さんと一緒にエレベーターに乗った。 いつもと違う皆で降りた。 『経理部』と書かれている。 中に小さな会議室みたいな所があり、そこに通される。 僕は領収書などをまとめた半透明のビニール製のポーチを取り出し、今回の仕事で購入したものの領収書を高村さんに渡した。 高村さんは一枚一枚確認しながら、電卓で計算していく。 「……ありがとうございます。全て経費で落とせるので、また振り込みさせてもらいます」 「今回は色々ご迷惑をかけて、すみませんでした……」 花園さんとの一件は、ちゃんと花園さんとのコミュニケーションが取れてなかったことが原因なのかなと思った。 苦手だからって、逃げてちゃダメだったよね……。 「いいえ。佳純くんはちゃんと仕事をしてくれてましたよ?最後までやり遂げたことは、誇りに思ってくださいね」 高村さんは、すごく優しい。 初めてお店に来てくれたときは、少し冷たい感じがすると思ったけど、人当たりが良くて、かっこ良くて、仕事もできて、本当に憧れちゃうな。 「それでは、これで佳純くんのお仕事は一旦おしまいですので……お疲れ様でした。お花はそのまま会場に飾らせてもらいます。また発注させてもらいますね」 「はい!ありがとうございました」 高村さんにお辞儀をし、エレベーターに乗って、一階に降りた。 エレベーターから降りると、花園さんを見かけた。 何やら、人目を気にしているらしく、辺りを見渡しながら、一階の奥にある細い廊下の角を曲がっていった。

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