51 / 79

第47話

〈小野目線〉 佳純さんが帰ってこない。 佳純さんは寄り道せずに、まっすぐ帰ってくる人だし、もし途中で買い物に行くってなったら、絶対連絡してくれる。 予定の時間になっても、全く連絡がない。 一度、高村さんに電話してみると、本社での用事が済んで帰ったと言われた。 俺はさらに不安になった。 何かに巻き込まれたんじゃ……。 「佳純さん……」 花屋のドアがカランカランとベルが鳴ると、池村がノートパソコンを脇に抱えてやって来た。 「池ちゃん……佳純さんが……」 「聞いたよ。それから、さっき本社のパソコンがハッキングされたみたい」 「え!?あっちもこっちもヤバいじゃん!」 パーカーのポケットからコンビニのおにぎりを出しながら、池ちゃんはパソコンを開いた。 カタカタとキーボードを叩くと、マップが出てきて、赤い光が点滅している。 「な、なにこれ?」 「GPS」 もぐもぐとしぐれのおにぎりを食べながら、ケータイを出して、電話をした。 「高村さん?車出して。結婚式場の裏口の駐車場にいるみたい」 池ちゃんはそれだけ伝えるとパソコンを一旦閉じた。 「池ちゃん、何でGPSなんて……あ、スマホのGPS?」 「ハズレ」 池ちゃんはあっという間におにぎりを食べ終わり、「小野も来て。もうすぐ来るから」と店の外に出る。 「なぁなぁ、何でGPS信号なんて受信できてんの?」 「そんなの、社長が心配して付けたに決まってんじゃん」 「ま、まさか……あのお守り?」 池村はニッと笑い、迎えに来た本社の車に乗り込んだ。 ―――― 〈佳純目線〉 「ん……」 僕は、暗闇の中で目を覚ました。 頭はまだ少しぼーっとしてるし、何やら狭い場所に押し込められている。 箱の中? 天井を押し上げると、ボコッと音を立てて、天井が開いた。 どうやら、段ボールの中に押し込められていた らしい。 「ここ……どこ?」 真っ暗で何も見えなかったが、少しすると暗闇に目が慣れてきた。 部屋の所々に段ボールや発泡スチロールが置かれており、少しひんやりとしている。 「出口は……」 辺りを見渡すと、右側から光が漏れていることに気付き、近づこうとすると、外から二人の男の人の声が聞こえた。 「これで全部だな」 「そうだな」 「領収書ももらったし、帰るか」 「へーい」 ガチャリと金属製の掛け金を掛けたような音が聞こえ、慌てて近くまで寄り、ドアを叩く。 「すみませーん!中にいます!!開けてください!!中にいます!!開けてください!!」 ドンドンと叩くも、聞こえないところに行ってしまったのか、全く開く気配がない。 倉庫か何かになのだろうか……と考えていたその時、地鳴りのような音が聞こえ、部屋自体が小刻みに揺れ始めた。 地震じゃない。 これは、エンジン音? ここってもしかして、トラックか何かの中なのだろうか。 僕はもう一度、ドンドンと扉を叩くが応答なし。 もう運転席に行ってしまったらしい。 途方にくれていると、ポケットのスマホを見ようとポケットの中を慌てて探すも、見当たらず……。 残っているのは、ポケットの奥にしまってあった、ボールペンだけ。 望さんからもらったボールペンだ。 「望さん……」 僕は壁に背をつけて、座り込んだ。 どこまで連れていかれるのだろう。 ただ絶望的な空気に包まれていった。

ともだちにシェアしよう!