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第47話
〈小野目線〉
佳純さんが帰ってこない。
佳純さんは寄り道せずに、まっすぐ帰ってくる人だし、もし途中で買い物に行くってなったら、絶対連絡してくれる。
予定の時間になっても、全く連絡がない。
一度、高村さんに電話してみると、本社での用事が済んで帰ったと言われた。
俺はさらに不安になった。
何かに巻き込まれたんじゃ……。
「佳純さん……」
花屋のドアがカランカランとベルが鳴ると、池村がノートパソコンを脇に抱えてやって来た。
「池ちゃん……佳純さんが……」
「聞いたよ。それから、さっき本社のパソコンがハッキングされたみたい」
「え!?あっちもこっちもヤバいじゃん!」
パーカーのポケットからコンビニのおにぎりを出しながら、池ちゃんはパソコンを開いた。
カタカタとキーボードを叩くと、マップが出てきて、赤い光が点滅している。
「な、なにこれ?」
「GPS」
もぐもぐとしぐれのおにぎりを食べながら、ケータイを出して、電話をした。
「高村さん?車出して。結婚式場の裏口の駐車場にいるみたい」
池ちゃんはそれだけ伝えるとパソコンを一旦閉じた。
「池ちゃん、何でGPSなんて……あ、スマホのGPS?」
「ハズレ」
池ちゃんはあっという間におにぎりを食べ終わり、「小野も来て。もうすぐ来るから」と店の外に出る。
「なぁなぁ、何でGPS信号なんて受信できてんの?」
「そんなの、社長が心配して付けたに決まってんじゃん」
「ま、まさか……あのお守り?」
池村はニッと笑い、迎えに来た本社の車に乗り込んだ。
――――
〈佳純目線〉
「ん……」
僕は、暗闇の中で目を覚ました。
頭はまだ少しぼーっとしてるし、何やら狭い場所に押し込められている。
箱の中?
天井を押し上げると、ボコッと音を立てて、天井が開いた。
どうやら、段ボールの中に押し込められていた
らしい。
「ここ……どこ?」
真っ暗で何も見えなかったが、少しすると暗闇に目が慣れてきた。
部屋の所々に段ボールや発泡スチロールが置かれており、少しひんやりとしている。
「出口は……」
辺りを見渡すと、右側から光が漏れていることに気付き、近づこうとすると、外から二人の男の人の声が聞こえた。
「これで全部だな」
「そうだな」
「領収書ももらったし、帰るか」
「へーい」
ガチャリと金属製の掛け金を掛けたような音が聞こえ、慌てて近くまで寄り、ドアを叩く。
「すみませーん!中にいます!!開けてください!!中にいます!!開けてください!!」
ドンドンと叩くも、聞こえないところに行ってしまったのか、全く開く気配がない。
倉庫か何かになのだろうか……と考えていたその時、地鳴りのような音が聞こえ、部屋自体が小刻みに揺れ始めた。
地震じゃない。
これは、エンジン音?
ここってもしかして、トラックか何かの中なのだろうか。
僕はもう一度、ドンドンと扉を叩くが応答なし。
もう運転席に行ってしまったらしい。
途方にくれていると、ポケットのスマホを見ようとポケットの中を慌てて探すも、見当たらず……。
残っているのは、ポケットの奥にしまってあった、ボールペンだけ。
望さんからもらったボールペンだ。
「望さん……」
僕は壁に背をつけて、座り込んだ。
どこまで連れていかれるのだろう。
ただ絶望的な空気に包まれていった。
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