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第48話
〈獅子尾目線〉
池村から連絡があり、どうやら佳純は式場の駐車場にいるらしい。
ちょうど向かっているところだったため、自分の車を裏の駐車場に停めた。
辺りを探してみるも、隠れられるようなところもない。
もうすぐ式場がオープンするため、業者のトラックの出入りが激しい。
ポケットに入れた携帯が震える。
池村だ。
「どうした?」
『社長。佳純が移動し始めた』
「何だと……今、駐車場にいるが、どこにも……」
『このスピードは車だと思う』
「車……」
俺は、さっき走り出したトラックを見た。
もしかしたら……
俺は急いで車に乗り込み、トラックの後を追いかけた。
北海道ナンバーの魚介類を乗せていたトラック。
高速道路に乗られると厄介だ。
すぐに停めなければ。
式場を出ると、すぐに大きな通りに出た。
少しスピードを出して、車線変更し、トラックと並ぶ。
運転手たちの顔をみるが、ヤクザのような奴らではなく、何も知らない一般人のようだ。
信号が青になり、同じスピードで並走する。
暫くして、車の交通量が減ったところで、トラックの前に自分の車をつけ、ハザードランプをつけて車を停めた。
後ろの運転手も驚いた顔をしているが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
俺は急いで、トラックに駆け寄った。
「おい!後ろのトラックの荷台を開けてくれ!」
「え?何ですか……急に……」
「いいから、開けろっつってんだろ!!」
運転手はビビりながら、運転席からおり、荷台の掛け金を外して、中を開ける。
冷凍できるトラックのため、ひんやりとした空気が下に流れ込んだ。
奥にうずくまるように座っている人影を見つけた。
「佳純!!」
冷やされた体を温めるため、ぎゅっと体を抱き抱え、トラックから出た。
――――
〈佳純目線〉
暫くして車が走り始めると、急に冷気が漂ってきた。
かなり寒い……。
僕は式場の駐車場にあった冷凍庫付きのトラックを思い出した。
まさか、このトラックって鮮魚とかを運ぶトラックなのだろうか。
そんなことを考えていると、だんだん体が冷えてきた。
まずい。
僕は自分の体をぎゅっと抱き締め、うずくまった。
これは非常にまずい……!
それに何だか息苦しい。
きっと酸素が薄くなってるんだ。
呼吸をあまりしないようにしないと……。
でも、このトラック、どこまで行くんだろ。
冷凍保存して来るくらいだから、遠いところ、だよね。
僕の頭に、「死」という言葉が浮かぶ。
怖い、嫌だ、死にたくない!
早く、誰か……
望さん……!
トラックが急に止まった。
暫く止まっていると、掛け金を外す音が聞こえた。
「佳純!!」
ずっと聞きたかった声。
もうほとんど意識なんてなかったけど、体が暖かくなったのを感じた。
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