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第52話(獅子尾目線)

佳純がトラックに閉じ込められて一週間。 特に何事もなく、平穏な日々を過ごしている。 毎日店に通っているし、 毎日佳純にメールしているし、 たまにご飯も一緒に食べているし……。 うん。順調に俺は佳純を好きになっていっている。 いや、元から好きなんだが。 「社長。口元がにやけてます。仕事してください」 高村にピシャリと言われてしまった。 そんなにやけてなんてないはずだ……。きっと、多分。 「そう言えば、そろそろ夏季休暇の申請をする時期ですけど、社長はいつ頃取られますか?」 「ん?あぁ……もうそんな時期か……」 毎年、社員たちは夏季休暇を一週間取れるようにしており、獅子尾コーポレーションが買い取った海近の別荘地を保養所として社員に提供している。 自分たちも毎年利用しており、高村や小野たちと一緒にゆっくりと過ごしている。 「そうだな……月末あたりにとるか」 そういえば、佳純は夏休みというものはあるのだろうか。 せっかくだから、一緒に過ごせたりできないだろうか……。 「社長……佳純くんも誘ってみてはどうですか?」 「っ!?何で今……!」 まるで心を読まれてたかのようなタイミングだったので、俺はかなり動揺してしまった。 「卓上カレンダーを見て、そんな顔して考え事してたら、馬鹿でも気づきます」 「そんな顔って……どんな顔だ?」 「自覚なしですか……」と高村に呆れられていると、お茶を運びにもう一人の秘書である松岡が入ってくる。 「あ、松岡さんも夏季休暇、まだでしたよね?我々は月末に取るんですけど、良かったら松岡さんも一緒にどうですか?」 にこりと高村は松岡を誘う。 普通の女子社員なら、すぐに了承しそうだが、松岡はそんじょそこらの女子とは違い……変わっていると思う。仕事はできるのだが。 「社長とですか?」 じっと何かを考えるように俺の方を見る。 高村はにこにこしたまま、「今なら佳純くんもついてきます」と言うと、即座に「行きます」と松岡は返事をした。 おい、高村、佳純をおまけみたいな言い方すんじゃねぇ。むしろ俺にとってはメインだ。 そして、松岡、てめぇもすぐに反応するな。……もしかして、お前も佳純のことが好きなんじゃねぇだろうな。 「というわけで、社長。明日佳純くんをお誘いしてきてください」 「は!?」 「は?じゃなくて、社長からお誘いしてきてください。もう何度か食事とか誘ったことがあるのでしょう?」 「そ、それはそうだが……」 普通の食事と泊まりがけの旅行だと、違うような気が……。 「真夏の海、別荘、二人だけのバカンス……社長、こんなおいしそうな……いえ、素敵な好感度アップイベントはそうそうありません。ここで経験値を稼いで、好感度をあげておかないと特殊イベントは起きませんよ」 松岡、お前は何を言ってるんだ。 だが、確かに佳純とバカンスを楽しんでみたい。 「……分かった。明日誘ってみる」 ―――――― そして、今日、佳純を誘ってみたが、見事に断られてしまい、かなり凹んだ。 仕事に一生懸命な佳純の事だ。予想はしてたが、これはかなり落ち込む……。 すると、高村(救世主)が現れ、魔法でも使ってんのかと思うほど、上手いこと佳純を誘い、見事に了承を得た。 「夏休みなんて久しぶりすぎて……すごく楽しみです」 可愛い。 好きだ。 佳純と俺の間にカウンターがあってよかった。 なかったら、抱きしめていたかもしれない。 「あ!別荘地って、海辺なんですか?」 「そうだが……」 「水着……持ってないや」 その言葉を聞いて、思わず水着姿の佳純が押し寄せてきた。 しなやかな白い上半身、細い腰、淡いピンク色の乳首、臀部から太ももにかけてのライン……いかん、鼻血出そう。 これじゃあ完璧に変態だ。 「俺も水着ないから、佳純さん、俺と買いにいこーよ!」 横から小野が佳純に話しかける。 「明日水曜日で定休日だもんね。いいよ」 佳純と買い物だと……? 俺も行くと言いかけると、横から高村に「分かっていると思いますが、社長は明日、大事な商談ですので休めませんよ」と釘を刺された。 思わず舌打ちをしてしまう。 「社長、怒られてやんの」 小野がケラケラと笑っている。 こいつ、絶対しめる。 「似合うかどうか分からないですけど、いい水着買ってきます」 控えめに笑う佳純は、控えめに言って天使に思えた。 「あぁ……楽しみにしてる」 旅行に行ける日が来るなんて思わなかった。 本当に楽しみだ。

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