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第57話

「……み、佳純!」 耳元で望さんの声が聞こえ、ぱっと目が覚める。 声のする方を見ると、近くに、本当に近くに望さんの顔があった。 「よく眠れたか?」 「あ、えっと……」 僕、もしかして、望さんの肩に寄りかかってた……? 状況が分かると、途端に心配になってきた。 「ご、ごめんなさい!!僕、望さんの肩に寄りかかっちゃって……!あの、重くなかったですか?」 「いや、重くなかったし……ゆっくり休めたようで良かった」 望さんはニコリと柔らかく笑いかけられ、顔が熱くなるのが分かる。 「あ、あの、今どこら辺ですか?」 赤面を誤魔化すように、キョロキョロしていると太陽に照らされた水平線が見えた。 「うわぁ……綺麗……」 「もうすぐ着く。別荘から見える海も綺麗だから、見てみるといい」 「はい!」 『高見シーサイドリゾート』と書かれた立派な看板が見えてきた。 コテージのような小さな家がいくつかあって、奥に大きな家が見えた。 マイクロバスはそのまま敷地内に入り、大きな別荘の前に止まった。 「はーい!着きましたよー!」 小野くんは大きな別荘の前に車を停めると、後部座席の扉を開けた。 ぞろぞろと皆が車の外に出ると、改めて別荘の大きさにびっくり。 「うわぁ……大きい……ここ、望さんの別荘なんですか?」 「元々は親父の別荘だったが、モナコに別荘を建てたから、お前にやると言われてな。会社の保養地に丁度いいと思って、使わせてもらっている」 す、スケールが違いすぎて……。 「皆さん、それではコテージの鍵をお渡ししますので、名前を呼ばれたら取りに来てください」 高村さんがテキパキと鍵を配っていると、受付の子二人が小野くんを挟んで、何やら話している。 「えー、淳也くん、コテージじゃないのぉ?」 「コテージだったら、遊びに行くのにぃ……」 「ごめんごめん。運転手する代わりに連れてきてもらったから、社長の別荘の部屋借りるんだ。明日ホームパーティするし、その時一緒にご飯食べよ!」 屈託のない笑顔を見せると、女の子は不満そうな顔をしながら、引き下がった。 「海行く時は絶対に遊んでね!」 「約束だからねー?」 「もちろん!」 やっぱり小野くんってモテるんだな。 顔もかっこいいし、コミュ力も高いし……すごいなぁ。 「佳純、大丈夫か?ぼーっとしてるが……まだ眠たいのか?」 望さんが心配そうに僕の顔をのぞき込む。 「あ、大丈夫ですよ!鍵、もらわないと」 「佳純は、俺の別荘の一室を使う予定だ」 え。 望さんとひとつ屋根の下?? 「ごめんなさい!てっきりコテージかと……そうですよね!一人で使うなんて、勿体ないですよねっ。図々しくて、ごめんなさいっ」 「いや、そんなことはないが……ただ」 望さんはちらりと僕の顔を見ると、短く溜息をついた。 「佳純はもっと自分のことを自覚した方がいい」 どういうことだろう? 僕は、ただ首を傾げるだけだった。

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